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渦巻ける烏の群(黒島伝治)のあらすじ・登場人物

雪の曠野に群がる烏

  • 社会

黒島伝治 1928年(昭和3年)2月 「改造」

文字数
17,196字
読了目安
約34分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

黒島伝治が1928年(昭和3年)、「改造」に発表した短編小説。自らシベリア出兵に従軍した経験をもとに、雪に閉ざされたシベリアに駐屯する日本軍の兵士たちを描く。残飯をもらいに来る現地の子どもたちとの交流、炊事場の臭い、凍てついた泉の氷といった細部が、乾いた短い文で積み重ねられていく。兵士の目から軍隊の不条理を見つめた作品で、作者の代表作であり、プロレタリア文学の反戦小説として知られる。

あらすじ

雪の降りしきるシベリアの村で、炊事当番の松木のもとへ、毎日のようにロシア人の子どもたちが残飯をもらいに来る。松木や武石ら兵士たちは、子どもたちの家を訪ね、パンや砂糖と引き換えに温かいもてなしを受けるうち、貧しい村の娘ガーリヤとも親しくなる。ところが、そのガーリヤに大隊長も目をつけていた。兵士が娘の家に出入りしていることを知った大隊長は嫉妬し、松木と武石のいる中隊に、雪の中を遠く離れた地への移動を命じる。中隊は深い雪の曠野へ出発するが、道に迷い、寒さと飢えに倒れていく。春が近づき、村人が日本兵の持ち物を持っていたことから、雪の下に兵士たちが埋もれていることが明らかになる。翌日捜しに出た兵士たちが見たのは、群がる烏についばまれた仲間たちの屍だった。

登場人物

冒頭部(原文より)

「アナタア、ザンパン、頂だい。」  子供達は青い眼を持っていた。そして、毛のすり切れてしまった破れ外套にくるまって、頭を襟の中に埋めるようにすくんでいた。娘もいた。少年もいた。靴が破れていた。そこへ、針のような雪がはみこんでいる。

「渦巻ける烏の群」黒島伝治(青空文庫)

末尾部(原文より)

 兵士達が行くと、烏は、かあかあ鳴き叫び、雲のように空へまい上った。  そこには、半ば貪り啄かれた兵士達の屍が散り散りに横たわっていた。顔面はさんざんに傷われて見るかげもなくなっていた。  雪は半ば解けかけていた。水が靴にしみ通ってきた。  やかましく鳴き叫びながら、空に群がっている烏は、やがて、一町ほど向うの雪の上へおりて行った。  兵士は、烏が雪をかきさがし、つついているのを見つけては、それを追っかけた。  烏は、また、鳴き叫びながら、空に廻い上って、二三町さきへおりた。そこにも屍があった。兵士はそれを追っかけた。  烏は、次第に遠く、一里も、二里も向うの方まで、雪の上におりながら逃げて行った。

「渦巻ける烏の群」黒島伝治(青空文庫)

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