渦巻ける烏の群(黒島伝治)のあらすじ・登場人物
雪の曠野に群がる烏
- 社会
- 文字数
- 17,196字
- 読了目安
- 約34分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
黒島伝治が1928年(昭和3年)、「改造」に発表した短編小説。自らシベリア出兵に従軍した経験をもとに、雪に閉ざされたシベリアに駐屯する日本軍の兵士たちを描く。残飯をもらいに来る現地の子どもたちとの交流、炊事場の臭い、凍てついた泉の氷といった細部が、乾いた短い文で積み重ねられていく。兵士の目から軍隊の不条理を見つめた作品で、作者の代表作であり、プロレタリア文学の反戦小説として知られる。
あらすじ
雪の降りしきるシベリアの村で、炊事当番の松木のもとへ、毎日のようにロシア人の子どもたちが残飯をもらいに来る。松木や武石ら兵士たちは、子どもたちの家を訪ね、パンや砂糖と引き換えに温かいもてなしを受けるうち、貧しい村の娘ガーリヤとも親しくなる。ところが、そのガーリヤに大隊長も目をつけていた。兵士が娘の家に出入りしていることを知った大隊長は嫉妬し、松木と武石のいる中隊に、雪の中を遠く離れた地への移動を命じる。中隊は深い雪の曠野へ出発するが、道に迷い、寒さと飢えに倒れていく。春が近づき、村人が日本兵の持ち物を持っていたことから、雪の下に兵士たちが埋もれていることが明らかになる。翌日捜しに出た兵士たちが見たのは、群がる烏についばまれた仲間たちの屍だった。
登場人物
- 松木 シベリアに駐屯する日本兵。炊事場で残飯を子どもたちに分け与える
- 武石 松木の同僚の兵士
- ガーリヤ 村の貧しいロシア人の娘。兵士たちと親しくなる
- 大隊長 ガーリヤに目をつけ、兵士たちに嫉妬する上官
冒頭部(原文より)
「アナタア、ザンパン、頂だい。」 子供達は青い眼を持っていた。そして、毛のすり切れてしまった破れ外套にくるまって、頭を襟の中に埋めるようにすくんでいた。娘もいた。少年もいた。靴が破れていた。そこへ、針のような雪がはみこんでいる。
「渦巻ける烏の群」黒島伝治(青空文庫)
末尾部(原文より)
兵士達が行くと、烏は、かあかあ鳴き叫び、雲のように空へまい上った。 そこには、半ば貪り啄かれた兵士達の屍が散り散りに横たわっていた。顔面はさんざんに傷われて見るかげもなくなっていた。 雪は半ば解けかけていた。水が靴にしみ通ってきた。 やかましく鳴き叫びながら、空に群がっている烏は、やがて、一町ほど向うの雪の上へおりて行った。 兵士は、烏が雪をかきさがし、つついているのを見つけては、それを追っかけた。 烏は、また、鳴き叫びながら、空に廻い上って、二三町さきへおりた。そこにも屍があった。兵士はそれを追っかけた。 烏は、次第に遠く、一里も、二里も向うの方まで、雪の上におりながら逃げて行った。
「渦巻ける烏の群」黒島伝治(青空文庫)
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