一九二八年三月十五日(小林多喜二)のあらすじ・登場人物
三・一五事件の凄惨な拷問
- 社会
- 文字数
- 45,765字
- 読了目安
- 約1時間32分
- 表記
- 旧字旧仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 北海道
この作品について
小林多喜二が1928年(昭和3年)、雑誌「戦旗」11月・12月号に発表した中編小説。「蟹工船」と並ぶ多喜二の代表作であり、日本プロレタリア文学を代表する作品の一つである。同年3月15日、日本共産党や労働運動の関係者が全国で一斉に検挙された「三・一五事件」に取材し、多喜二の郷里・小樽で捕らえられた活動家たちが、警察でいかに凄惨な拷問を受けたかを克明に描く。権力による弾圧の非道を告発したその筆致は、のちに多喜二自身が特高警察の拷問で命を落とす運命をも予感させる、告発文学の記念碑である。
あらすじ
昭和三年三月十五日、小樽の町にも一斉検挙の手が伸びる。労働組合の活動家・渡(龍吉)とその妻お恵、そして工藤、鈴本、斎藤ら、労働運動にたずさわる者たちが次々と警察に捕らえられていく。留置場に放り込まれた男たちを待っていたのは、想像を絶する拷問だった。竹刀や縄で打ちすえられ、逆さ吊りにされ、正気を失うまで責め立てられる――特高警察は「事実」を自分たちの筋書きどおりに作りあげるために、あらゆる惨虐な手段を用いる。それでも屈しない者、恐怖に耐える者、それぞれの姿が描かれる。やがて取調べを終えた者は札幌の裁判所へと護送され、署内は急にがらんとする。人のいなくなった留置場の壁には、捕らえられていた者たちが申し合わせたように刻みつけた文字が残っていた――「一九二八、三、一五!」「万国の労働者団結せよ」。権力の暴虐と、それに抗する者たちの不屈の姿を、多喜二が怒りをこめて描いたプロレタリア文学の代表作である。
登場人物
- 渡(龍吉) 小樽の労働運動の活動家。三・一五事件で検挙され、過酷な取調べを受ける
- お恵 龍吉の妻。運動の場での夫の姿に、いつも慣れきれずに怯える
- 工藤・鈴本・斎藤ら ともに捕らえられ、警察で凄惨な拷問に耐える活動家たち
- 特高警察・司法主任 筋書きどおりの自白を得るため、惨虐な拷問を重ねる取調べ側
冒頭部(原文より)
お惠には、それはさう仲々慣れきることの出來ない事だつた。何度も――何度やつてきても、お惠は初めてのやうに驚かされたし、ビク/\したし、周章てた。そして、又その度に夫の龍吉に云はれもした。然し女には、それはどうしても強過ぎる打撃だつた。
「一九二八年三月十五日」小林多喜二(青空文庫)
末尾部(原文より)
四月××日迄には××警察に抑留されてゐた全部が札幌へ護送されて行つてしまつた。急に署内がガランとした。壁の樂書だけが、人の居ない室に目立つた。皆を入れて置いた壁には申し合せたやうに、次の文句が殆んどちがひなく、入念に刻みこまれてゐた。 一九二八、三、一五! 勞働農民黨 萬歳 萬國の勞働者 團結せよ
「一九二八年三月十五日」小林多喜二(青空文庫)
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