党生活者(小林多喜二)のあらすじ・登場人物
地下に潜る活動家の緊張の日々
- 社会
- 文字数
- 65,572字
- 読了目安
- 約2時間11分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
1932年に執筆され、作者没後の1933年4〜5月、「中央公論」に「転換時代」の題で発表された小林多喜二の小説。軍需工場で働きながら、非合法の共産党活動に携わる「私」が日々を語る。同志との連絡が途切れたという知らせから、何気ない会話にも危険を読み取らねばならない生活が立ち上がる。下宿の人と普通に世間話をすること、出かける場所に合った服を着ること、原稿を手渡すこと。その一つ一つが、身を守り活動を続けるための切実な行動になる。工場の不満をどう受け止め、労働条件の問題と戦争への反対をどう結びつけるかという議論も、具体的な仕事の中で交わされる。運動の方針だけでなく、恐怖や苦手意識を持つ語り手の感覚を通して、地下生活の実際を描くところが特徴。組織を担う者が他人とどう関わり、自分の暮らしをどう組み立てるのかを考えさせる作品である。
あらすじ
地下に潜った「私」は、身分を偽って倉田工業で働きながら、須山、伊藤とともに労働者の組織づくりを進めている。工場は軍需景気で臨時工を大量に雇い入れたが、彼らはいつでも首を切れる存在である。私たちはビラを撒き、読書会やサークルを作り、臨時工と本工の分断を越えた闘争を準備していく。住み込み先の笠原は活動のための「家」を提供する存在だが、私は彼女との関係のあり方に痛みを覚えながらも活動を優先する。工場に警察の手が伸び、私は職場を離れて身を隠しながら指導を続ける。国もとから母が私に会いに来るが、非合法の身の私は多くを語れぬまま、もう会えないかもしれない別れを交わす。やがて会社は解雇の「先手」を打ち、須山も伊藤も工場を追われる。だが散っていった同志たちはそれぞれの職場で新しい火種となり、組織の胞子はかえって広がった。「今、私と須山と伊藤はモト以上の元気で、新しい仕事をやっている」——手記はそう結ばれる。
登場人物
- 私 軍需工場で組織づくりを進める非合法活動家。本作の語り手
- 須山 調子は軽いが憎めない同志
- 伊藤 女工たちをまとめる若い同志
- 笠原 私に住処を提供する同棲相手
- 母 私の身を案じて会いに来る
冒頭部(原文より)
洗面所で手を洗っていると、丁度窓の下を第二工場の連中が帰りかけたとみえて、ゾロ/\と板草履や靴バキの音と一緒に声高な話声が続いていた。 「まだか?」 その時、後に須山が来ていて、言葉をかけた。彼は第二工場だった。
「党生活者」小林多喜二(青空文庫)
末尾部(原文より)
彼奴等は「先手」を打って、私たちの仕事を滅茶/\にし得たと信じているだろう、だが実は外ならぬ自分の手で、私たちの組織の胞子を吹き拡げたことをご存知ないのだ! 今、私と須山と伊藤はモト以上の元気で、新しい仕事をやっている……
「党生活者」小林多喜二(青空文庫)
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