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イワンの馬鹿(トルストイ)のあらすじ・登場人物

手にまめのある者だけが食卓へ

  • 幻想
  • 社会
  • 翻訳

トルストイ 訳者 菊池寛 1928年(昭和3年)12月

文字数
27,822字
読了目安
約56分
表記
新字新仮名

この作品について

トルストイが民話の形を借りて書いた寓話(1886年)を、菊池寛が「小学生全集」のために訳したもの。兵隊のシモン、肥満のタラス、そして馬鹿のイワン——三人の兄弟を悪魔が仲たがいさせようとするが、手を働かせることしか知らないイワンにはどんな計略も通じない。武力も金もついには無力で、手にまめのある者だけが食卓につけるという結びは、晩年のトルストイの思想をそのまま物語にしたものとして読み継がれてきた。

あらすじ

ある百姓に、兵隊のシモン、肥満のタラス、馬鹿のイワンという三人の息子と、つんぼでおしの娘マルタがあった。シモンは戦争で位と領地を得、タラスは町で商人となって財を築くが、どちらも父の身代をあてにするばかり。イワンだけは妹とともに家に残り、背中の曲がるほど働いていた。三人を仲たがいさせて破滅させようと、年とった悪魔は三匹の小悪魔を送りこむ。シモンには兵をそそのかして敗戦を、タラスには金の力を過信させて破産を招き、そして残る一匹がイワンにかかるが、いくら畑を固くしても、木を重くしても、イワンはただ黙々と鋤をふるい、斧を振るうばかりで、まったく参らない。捕らえられた小悪魔は、命乞いに兵隊を作る術と、木の葉を金貨に変える術を差し出した。イワンはその力で兄たちに兵と金を分けてやり、自分は相変わらず土を耕す。やがて王となったイワンの国には、働く者だけが集まり、手にまめのない者は食べ残しを食べるという習わしができた。年老いた悪魔がみずから紳士に化けて現れ、手を使わずに頭で暮らせると説くが——。

登場人物

冒頭部(原文より)

一  むかしある国の田舎にお金持の百姓が住んでいました。百姓には兵隊のシモン、肥満のタラスに馬鹿のイワンという三人の息子と、つんぼでおしのマルタという娘がありました。兵隊のシモンは王様の家来になって戦争に行きました。肥満のタラスは町へ出て商人になりました。馬鹿のイワンと妹のマルタは、家に残って背中がまがるほどせい出して働きました。兵隊のシモンは高い位と広い領地を得て、王様のお姫様をお嫁さんに貰いました。お給金もたくさんだし領地から上る収入も大したものでしたが、彼はそれを、うまくしめくくっていくことが出来ませんでした。おまけに主人がもうけたものをお嫁さんが滅茶に使ってしまうので、いつも貧乏していなければなりませんでした。

「イワンの馬鹿」トルストイ(青空文庫)

末尾部(原文より)

また悪魔だ。大きなことばかり言ってやがって、きっとあいつらの親爺に違いない。」 とイワンは言いました。  イワンは今でもまだ生きています。人々はその国へたくさん集まって来ます。かれの二人の兄たちも養ってもらうつもりで、かれのところへやって来ました。イワンはそれらのものを養ってやりました。 「どうか食物を下さい。」 と言って来る人には、誰にでもイワンは、 「いいとも、いいとも。一しょに暮すがいい。わしらにゃ何でもどっさりある。」 と言いました。  ただイワンの国には一つ特別なならわしがありました。それはどんな人でも手のゴツゴツした人は食事のテイブルへつけるが、そうでない人はどんな人でも他の人の食べ残りを食べなければならないことです。

「イワンの馬鹿」トルストイ(青空文庫)

名文

ただイワンの国には一つ特別なならわしがありました。それはどんな人でも手のゴツゴツした人は食事のテイブルへつけるが、そうでない人はどんな人でも他の人の食べ残りを食べなければならないことです。

馬鹿のイワンが王となった国の風習。手のゴツゴツした働く人が尊ばれ、そうでない人は食べ残しを与えられる——労働を重んじるトルストイの思想が表れる結び。

原文を読む

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