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坑夫の子(葉山嘉樹)のあらすじ・登場人物

吹雪の底で父を起こす子ら

  • 社会
  • 家族

葉山嘉樹 1927年(昭和2年)

文字数
5,724字
読了目安
約11分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

山峡の発電所建設現場を舞台にした短編。川が涸れる冬のあいだに掘鑿を終えなければならないため、坑夫たちは吹雪の日も昼夜兼行でダイナマイトを仕掛け続けている。期限に間に合えば会社に十万円、親方に三万円の賞与が出る——その勘定のために「消費」されるのは、ダイナマイトと坑夫の命だった。葉山嘉樹自身が飯場で働いた土木工事現場の実感が、乾いた筆致で刻まれている。

あらすじ

発電所の掘鑿は水面下五十尺に達していた。冬のうちに掘り上げなければ、また一年待たねばならない。会社から組へ十万円、組から親方へ三万円という賞与を目当てに、坑夫たちは吹雪の中でも昼夜兼行で岩を噛み続ける。午後六時の上り発破。人夫たちが早々に引き上げた吹雪のなか、十年目の秋山と三十年目の小林は、二十三本の導火線に火を移した。だが、点火の前から腰の痛みに耐えていた秋山の様子がおかしい。「おい。もう、半分燃えてるぞ!」と急かす小林の目の前で、彼は捲上道にへたり込んでしまった。小林は秋山を担ぎ上げるが、一人でも登りにくい四十五度の坂を、人を負って駆けることはできない。やがて機関銃のような轟音とともに、岩片が降りそそいだ。——夕食の時刻になっても父たちが帰らない。長屋で待ちくたびれた、どちらも十歳になる二人の男の子が、足袋跣足で工事場へ駆け出す。コンプレッサー、鍛冶場、変電所。どこにもいない。二つの小さな影は、川上の捲上小屋へ向かった。

登場人物

冒頭部(原文より)

 発電所の掘鑿は進んだ。今はもう水面下五十尺に及んだ。  三台のポムプは、昼夜間断なくモーターを焼く程働き続けていた。  掘鑿の坑夫は、今や昼夜兼行であった。  午前五時、午前九時、正午十二時、午後三時、午後六時には取入口から水路、発電所、堰堤と、各所から凄じい発破の轟音が起った。沢庵漬の重石程な岩石の破片が数町離れた農家の屋根を抜けて、囲炉裏へ飛び込んだ。

「坑夫の子」葉山嘉樹(青空文庫)

末尾部(原文より)

 それでも、子供たちは、その小さな心臓がハチ切れるように、喘いでいるのにその屍体を起すことにかかっていた。若し、飯場の人たちが、親も子も帰らない事を気遣って、探しに来なかったならば、その親たちと同じ運命になるのであったほど、執拗に首を擡げる事を続けたであろう。  飯場の血気な労働者たちは、すっかり暗くなった吹雪の中で、屍体の首を無理にでも持ち上げようとする、子供たちを見て、誰も泣いた。

「坑夫の子」葉山嘉樹(青空文庫)

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