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栃の実(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

峠の茶屋で受け取った栃の実

泉鏡花 1924年(大正13年)8月 「新小説」

文字数
3,831字
読了目安
約8分
表記
新字新仮名
種別
随筆
舞台
  • 福井県

この作品について

1924年(大正13年)8月の『新小説』に発表された随筆風の小品で、岩波文庫『鏡花短篇集』に収められる。若い日、尾崎紅葉の門下にあった頃に、洪水で道が塞がった北陸の山道を駕籠で越えた旅の思い出を綴る。峠の茶屋の娘がくれた小さな栃の実を、今も箪笥の抽斗に大切にしているという結びが印象に残る。

あらすじ

八月中旬の洪水で、敦賀へ通じる道が通れなくなったため、語り手は金沢から福井を経て、武生から栃木峠越えの山道で東京へ向かう。福井の車夫と別れ、洪水のあとの熱い道を腹痛をこらえて急ぎ、虎杖村で駕籠を頼む。親切な二人の駕籠屋は、帰りの夜道のための松明を提げ、山の栃の大木の森を抜けて行く。峠の茶屋では、色白の若い娘が栃の餅を出し、腹が痛む語り手には熊の胆をくれる。別れ際、娘は栃の餅と、小さな卵のような艶やかな栃の実を土産に渡す。語り手は今も、その実を手箪笥の抽斗深くに持ち、時々取り出すと、殻の中で優しい音がするという。

冒頭部(原文より)

朝六つの橋を、その明方に渡った――この橋のある処は、いま麻生津という里である。それから三里ばかりで武生に着いた。

「栃の実」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

 小さな鶏卵の、軽く角を取って扁めて、薄漆を掛けたような、艶やかな堅い実である。  すかすと、きめに、うすもみじの影が映る。  私はいつまでも持っている。  手箪笥の抽斗深く、時々思出して手に据えると、殻の裡で、優しい音がする。

「栃の実」泉鏡花(青空文庫)

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