鳥獣剥製所(富永太郎)のあらすじ・登場人物
雪空の剥製所に動物がいる
- 文字数
- 3,224字
- 読了目安
- 約6分
- 表記
- 新字旧仮名
この作品について
富永太郎が「山繭」第3号(1925年2月)に発表した散文詩。雪空の下の剥製所という異様な建物を舞台にした幻想的な一篇。剥製にされた動物たちの硝子の眼球や、積もった白い塵が、冷たく描かれる。「一報告書」の副題をもち、死の気配に満ちた風景が語られる。
あらすじ
語り手は、その建物を圧しつけるような午後の雪空の下にしか見たことがない。それに近づくのは、あらゆる追憶の嫌悪が肉体を飽和したときに限られる。煤けた板壁に痴呆のような口を開けた硝子窓、古い樫の大卓子、動物の体腔から抜き出された古綿、桔梗色の薬品瓶が並ぶ部屋で、「私」は蛇、鷲、猿、鳩のほか、日本に分布するさまざまな両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類を見る。かれらはみな剥製だった。硝子の眼球は鈍く輝き、固定された表情は怨恨に満ちた無能の表白であり、羽毛や鱗の上には白い塵が積もっている。「私」はこの建物に近づくか否か、自分で賽を投げなかったことを悔やむが、すべては遅かった。
冒頭部(原文より)
私はその建物を、圧しつけるやうな午後の雪空の下にしか見たことがない。また、私がそれに近づくのは、あらゆる追憶が、それの齎す嫌悪を以て、私の肉体を飽和してしまつたときに限つてゐた。私は褐色の唾液を満載して自分の部屋を見棄てる、どこへ行くのかをも知らずに……
「鳥獣剥製所」富永太郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
さはれ去年の…… Hannii ― hannii ― hannii ― i ― i ― i ― i ……… bidn ! bidn ! bidn ! 私は手を挙げて眼の前で揺り動かした。そして、生きることゝ、黄色寝椅子の上に休息することが一致してゐるどこか別の邦へ行つて住まうと決心した。
「鳥獣剥製所」富永太郎(青空文庫)
原文を読む
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