十和田湖(泉鏡花)のあらすじ・登場人物
湖神の宮殿を訪ねる旅
- 文字数
- 15,728字
- 読了目安
- 約31分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 随筆
- 舞台
- 青森県
- 秋田県
この作品について
1927年(昭和2年)10月、「東京日日新聞」と「大阪毎日新聞」に連載された紀行文。鉄道省『日本八景』(1928年)にも収められた。新聞社の旅費で十和田湖を訪れた鏡花が、古間木から三本木原、焼山、奥入瀬の渓流を自動車で遡り、湖畔の子の口、休屋、発荷峠をめぐった道中を、絢爛たる比喩を重ねて描く。同行者の画家、写真班、医学博士との掛け合いも楽しい。
あらすじ
発荷峠で、案内役の保勝会の小笠原氏と別れる場面から文章は始まる。鏡花は道中の礼を述べ、見聞を新聞に書くことを約束する。一行は医学博士、洋画家、写真班、新聞社の高信氏と鏡花の五人。休屋の十和田神社への険しい参詣、龍神の祠、御占場の鉄階子と、湖の景観が描かれる。続いて回想として、古間木から自動車で出発した三本木の旅が語られる。開拓地の三本木を過ぎ、牧場の荒野に砂煙を巻き上げて走り、焼山の茶屋で雨宿りしたあと、奥入瀬の渓流を、水面すれすれに溯る。滝や釣舟草の咲く道を抜け、子の口の宿へ至る。洋燈の宿の食事や、湖で小蝦を手に取る朝の様子を記し、湖の姿を胡桃の実に見立てて筆を置く。
冒頭部(原文より)
これは、八月七日の午後、秋田県鹿角郡、生出を駕籠で上つて……これから三瀧街道を大湯温泉まで、自動車で一気に衝かうとする、発荷峠、見返茶屋を、……なごりの湖から、向つて右に見た、三岐の一場面である。
「十和田湖」泉鏡花(青空文庫)
末尾部(原文より)
ひそかに思ふ。湖の全景は、月宮よりして、幹紫に葉の碧なる、玉の枝より、金色の斧で伐つて擲つたる、偉なる胡桃の実の、割目に青い露を湛へたのであらう。まつたく一寸胡桃に似て居る。(完)
「十和田湖」泉鏡花(青空文庫)
原文を読む
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