アプリで読む

無料・登録不要

浴槽の花嫁(牧逸馬)のあらすじ・登場人物

花嫁たちを沈めた浴槽

  • ミステリ
  • 社会

牧逸馬 1930年(昭和5年)4月 「中央公論」

文字数
23,546字
読了目安
約47分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

1910年代の英国で、花嫁が結婚直後に入浴中の浴槽で急死する事件が相次いだ。夫は偽名で結婚し、妻に保険をかけ遺書を交わし、医者に診せておいて、湯に沈めて殺す。「死んだやつは死んだやつさ」と言い放つ冷血の結婚詐欺師ジョウジ・ジョセフ・スミスと、新聞の小さな記事から手口を突きとめていくロンドン警視庁の捜査を、牧逸馬が「世界怪奇実話」の一編として緻密に語る実録小説。

あらすじ

1913年12月、英国の海岸町ブラックプウルで、アウネスト・ブラドンと名乗る男が新妻の看護婦アリスと下宿へ入り、風呂のある部屋を借りる。男は二日前に近所の医師へ妻を診せておき、入浴中の妻を湯に沈めて溺死させると、鶏卵を買いに出ていたと装い、医師の死亡証明書によって過失死として片づけてしまう。男の正体はジョウジ・ジョセフ・スミス。結婚の直後に妻を生命保険に加入させ、互いを相続人とする遺書を交換し、動産を現金に換えたうえで殺すのが彼の常套手段だった。語り手は、ジェイムスの名で女中アリス・リイヴルを、ヘンリイ・ウイリアムズの名で老嬢ベシイ・マンディを、ジョン・ロイドの名で牧師の娘マアガレット・ロフティを手にかけていく経緯を、時間を前後させながら追う。ベシイの場合は癲癇の疑いと偽って医者を訪れ、一ポンド十七シリング六ペンスのブリキの浴槽を買う細かさだった。スミスは、死んだ者は死んだ者だと平然と言い放ち、ただ一人の情婦エデス・ペグラアにだけは犯行を隠して暮らしていた。ところが、マアガレットの変死を伝える小さな新聞記事を、アリス・バアナムの兄とブラックプウルの下宿の主人がそれぞれ見て不審を抱き、警察へ送る。これがロンドン警視庁の警部アウサア・ネイルの長い捜査の端緒となった。ネイルは四十三の市町村を飛びまわり、百五十七人の証人から供述を取って、ブリストルの家でスミスを逮捕する。1915年の裁判は九日間続き、共通する十三項目の事実が示され、法医学者の実演で浴槽での殺害方法も解明されて、スミスは死刑を宣告される。

登場人物

冒頭部(原文より)

英国ブラックプウルの町を、新婚の夫婦らしい若い男女が、貸間を探して歩いていた。彼らが初めに見にはいった家は、部屋は気に入った様子で、ことに女の方はだいぶ気が動いたようだったが風呂が付いていないと聞くと、男は、てんで問題にしないで、細君を促してさっさと出て行った。コッカア街に、クロスレイ夫人という老婆が、下宿人を置いていた。

「浴槽の花嫁」牧逸馬(青空文庫)

末尾部(原文より)

控訴も上告も棄却されて、死刑の執行を受けたのは、ケント州刑務所でだった。刑を宣告されたのが七月二十九日で、刑死は八月十三日、失神状態で絞首台に助けあげられた。 When he was dead he was dead.

「浴槽の花嫁」牧逸馬(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

近い作品