ファルスとは

分類
形式・ジャンル
読み
ふぁるす

笑劇・道化芝居を意味するフランス語 farce に由来する語。もとは中世フランスで演じられた滑稽な短い劇を指し、誇張された人物たちが騒ぎを起こして散々な目にあう筋立てを特徴とする。日本の近代文学では、坂口安吾が初期の自作の旗印としたことで知られる。安吾は昭和6年(1931年)、同人誌「青い馬」に、行方をくらました博士の遺書を語り手が熱弁で読み上げる『風博士』を発表し、牧野信一の賞賛を受けて注目された。続く『霓博士の廃頽』や、婚礼と通夜に挟まれた山村の騒ぎを描く『村のひと騒ぎ』でも、誇張と言葉の勢いで押す笑いを試みている。昭和7年(1932年)3月の「青い馬」第五号に載せた評論『FARCE に就て』では、ファルスとは「人間の全てを、全的に、一つ残さず肯定しようとするもの」だと述べ、空想も矛盾も含めて人間のありのままの混沌を肯定する精神だと論じた。そのうえで狂言や西鶴、『浮世風呂』『東海道中膝栗毛』など日本の古典の滑稽文学を挙げ、笑いの文学は悲劇や喜劇より低いものではないと擁護している。この考え方は、戦後の安吾が自分の小説を「戯作」と呼んだ姿勢にもつながっていく。

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