夢幻能とは

分類
形式・ジャンル
読み
むげんのう

能の曲の形式の一つで、死者の霊や神、草木の精など、この世のものでない存在を主人公(シテ)とし、全体を旅の僧などの脇役(ワキ)が見た夢や幻として描くもの。多くは中入をはさんで前場と後場に分かれる「複式夢幻能」で、旅人が名所旧跡を訪れると、里の者の姿をした前シテが現れて土地にまつわる話を語る。中入ののち、本来の霊の姿で後シテが現れ、思い出を語り、舞を舞って消えてゆく。実在の人間が時間の経過とともに劇を進める現在能と対をなす形式である。世阿弥はこの形式の能を数多く作ったと考えられている。『伊勢物語』に取材した『井筒』は代表作で、里の女が在原業平と井筒の女の話を語り、後場では井筒の女の霊が業平の形見の装束を着けて、昔を偲んで舞う。『平家物語』などの軍記物語や王朝の物語に題材をとる曲も多い。幽玄の美を追求した能の様式が、この形に結晶した。

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