省略法とは

分類
文体・技法
読み
しょうりゃくほう

文や語句の一部を省き、言い残した部分を読み手に補わせることで、余韻や緊張感を生む修辞技法。日本語はもともと主語や述語を省いても意味が通りやすい言語だが、修辞としての省略は、述べればくどくなるところをあえて言わずにおき、読み手の想像にゆだねるところに働きがある。清少納言の『枕草子』の冒頭「春はあけぼの」は、「をかし」などの述語を省いた言い切りで季節の美しさを感じ取らせる例として、よく引かれる。文末を名詞で止める体言止めや、「もう二度と……」のような言いさしも省略の一種で、和歌や俳句のように短い詩型では、省略によって言葉の外に広がる余情が重んじられてきた。小説では、出来事のあいだの説明を飛ばして場面を切り替えたり、結末をはっきり描かずに余韻を残したりするのも、広い意味での省略である。チェーホフや掌編小説の書き手たちは、語りすぎないことで読者の心に問いを残した。ただし、補うための手がかりがなければ、文はただ分かりにくくなる。どこまでを書き、どこからを読み手に任せるかの判断に、書き手の技量があらわれる。

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