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ベルとドラゴン(村崎敏郎)のあらすじ・登場人物

偶像は本当に食べるのか

  • ミステリ
  • 翻訳

村崎敏郎 1956年(昭和31年)2月

文字数
2,751字
読了目安
約6分
表記
新字新仮名

この作品について

「スザナの物語」と同じく、旧約聖書「ダニエル書」のギリシア語訳に付け加えられた外典の短い物語を、村崎敏郎が訳したもの。英語では「Bel and the Dragon」の題で知られる。1956年(昭和31年)2月、早川書房のハヤカワ・ポケット・ミステリ『名探偵登場1』に「スザナの物語」と並んで収められた。バビロンの王に仕えるダニエルが、毎日大量の供え物を平らげるという偶像ベルの正体をめぐって、祭司たちと命を賭けた勝負をする。知恵で真相を確かめる前半は、推理物語の古い例として取り上げられることがある。

あらすじ

バビロンの人々はベルという偶像を崇め、毎日大量の粉と羊とぶどう酒を供えていた。王に、なぜベルを拝まないのかと問われたダニエルは、あれは中が土で外が真鍮の像にすぎず、何も食べはしないと答える。怒った王は、供え物を食べているのがベルだと証明されればダニエルを、そうでなければ七十人の祭司を殺すと宣言する。祭司たちは、供え物を置いて扉を王の印で封じるよう求める。テーブルの下に秘密の入口があり、いつもそこから忍びこんでいたからだ。ダニエルは召使に命じて、王の目の前で神殿の床に灰をまかせておく。翌朝、封印はそのままで供え物は消えていたが、床には男や女や子どもの足跡が残っていた。祭司たちは家族と忍びこんでいたことを白状して殺され、ダニエルはベルと神殿を打ち壊す。続いてダニエルは、人々の崇める生きたドラゴンに、樹脂と脂肪と髪の毛を煮固めた塊を食べさせて裂き殺す。怒った民衆に迫られた王はダニエルをライオンの檻に投げこませるが、預言者ハバカクが主の使者に運ばれて食事を届け、七日目に王が見に行くとダニエルは無事だった。王はダニエルの神をたたえ、彼を殺そうとした者たちを檻に投げこんだ。

登場人物

冒頭部(原文より)

 バビロン人たちは、ベルと名付けた偶像を持つていて、毎日それに大升十二杯の上等の粉と、四十頭の羊と、六杯のブドウ酒を捧げた。そして王はそれを信仰して、毎日礼拝に行つた……だがダニエルは自分の神を信仰していた。  そして王がダニエルに言つた――「なぜおまえはベルをうやまわないのか?」  その人は答えて言つた――「それはわたくしが人の手で作つた偶像をうやまわないで、天と地を作り、生きとし生ける者を支配したまう生ける神をうやまうからでございます」  それから王は彼に言つた――「おまえはベルが生ける神だとは思わないのか? 毎日どんなにたくさん飲み食いなさるか知らないのか?」

「ベルとドラゴン」村崎敏郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

 そしてダニエルは言つた。「おお神よ、あなたはわたくしをお忘れになりませんでした。それからまた、あなたを求め、あなたを愛する者をお見捨てになりませんでした」  そこでダニエルは起き上つて、食事をした。そして主の使者はすぐまたハバカクを元の処に返した。  七日目に王はダニエルをとむらうために出かけた。そして檻の処へ来たとき、王がのぞくと、見よ、ダニエルがすわつていた。  その時王は大声で叫んで言つた。「偉大なるかな、おお、ダニエルの主なる神よ、あなたのほかに神はありません」  そして王はダニエルを引き出して、彼を殺そうと企てた人々を檻に投げこんだ。すると彼らは王の顔前で瞬間に食いつくされた。

「ベルとドラゴン」村崎敏郎(青空文庫)

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