スザナの物語(村崎敏郎)のあらすじ・登場人物
裁かれる貞淑な妻
- ミステリ
- 翻訳
- 文字数
- 3,604字
- 読了目安
- 約7分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
旧約聖書「ダニエル書」のギリシア語訳に付け加えられ、プロテスタントでは外典(経典外書)として扱われる短い物語を、翻訳家の村崎敏郎が訳したもの。英語では「The History of Susanna」の題で知られる。1956年(昭和31年)2月、早川書房のハヤカワ・ポケット・ミステリ『名探偵登場1』に収められた。バビロンに住む美しく信心深い人妻スザナが、二人の長老に言い寄られたことから窮地に立たされる。若きダニエルが見せる尋問は推理物語の最も古い例の一つに数えられ、ドロシー・L・セイヤーズが編んだ推理小説集でも巻頭に置かれた。
あらすじ
バビロンに住む裕福なヨアキムの妻スザナは、美しく神を恐れる女性だった。ヨアキムの家には裁き人に任じられた二人の長老が出入りしていたが、二人は庭を散歩するスザナを見て情欲を燃やし、ある暑い日、女中を下がらせて水浴びしようとした彼女に迫る。言うことを聞かなければ、若い男と密会していたと証言するとおどされたスザナは、主の前で罪を犯すよりはと拒んで叫び声を上げる。翌日、長老たちは人々の前で偽りの証言をし、スザナは死刑を宣告される。彼女が神に無実を訴えると、刑場へ引かれていく途中、ダニエルという年若い者が声を上げ、裁きのやり直しを求める。ダニエルは二人の長老を引き離して一人ずつ問いただし、密会を見たのはどの木の下かと尋ねる。一人はマスチックの木、もう一人はかしわの木と答え、証言の食い違いから偽証が明らかになる。二人は律法に従って死刑となり、スザナの無実は証され、ダニエルの名声はこの日から高まった。
登場人物
- スザナ ヨアキムの妻。美しく信仰心の篤い女性
- ヨアキム バビロンに住む裕福で尊敬される人物
- 二人の長老 裁き人に任じられた長老。スザナに横恋慕する
- ダニエル 年若い若者
冒頭部(原文より)
バビロンにヨアキムという人が住んでいた。そしてこの人はスザナという妻をもらつたが、これはケルキアスの娘で、たいへん美人であり、神を恐れる婦人であつた。この女の両親も正しい人で、モーゼの律法に従つて娘を教育した。 さてヨアキムは金持でえらい人だつたが、家に接する美しい庭園を持つていた。そしてこの人は他のだれよりも尊敬されていたので、ユダヤ人たちがしげしげと出入りした。 その年に人々の中から二人の長老が裁き人に任じられたが、これは主が告げたもうたように、邪悪はバビロンの老いたる裁き人からくるというたぐいの人で、人々を支配しているようであつた。この二人はたいていヨアキムの家にいて、法律の訴えをする者はみなここへ来た。
「スザナの物語」村崎敏郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
それと一緒に会衆一同は大声で叫んで、信ずる者を救いたもう神をほめたたえた。そして人々は二人の長老は有罪だといつて起立した(ダニエルが二人の口にした偽証を告発したからである)。そしてモーゼの律法に従つて、人々は、二人が悪意を持つて隣人を計ろうとしていたとおりの目にあわせることにして、二人を死刑にした。こうして罪なき者の血が同じ日に救われた。 それゆえにケルキアスとその妻は、夫のヨアキムや親類すべてと共々に、娘スザナのために神をほめたたえた。娘に少しも不正がなかつたからである。 その日から以後ダニエルは世間の評判が高くなつた。
「スザナの物語」村崎敏郎(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。
同じ作家の作品
- ベルとドラゴン 1956年(昭和31年)2月