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科学の不思議(ファーブル)のあらすじ・登場人物

ポール叔父さんの本当のお話

  • 翻訳

ファーブル 訳者 伊藤野枝 1923年(大正12年)8月

文字数
212,133字
読了目安
約7時間4分
表記
新字旧仮名

この作品について

ファーブルが『昆虫記』に先立つ1869年に出した、子ども向けの科学読本『ポール叔父さんが甥たちに語る科学の話』の訳。物識りの叔父さんが、姪や甥のクレール、ジュール、エミールにせがまれ、夕べの団らんで虫や動物、金属や紙、雷や火山、天体と季節、植物や海までの身近な不思議を、子どもたちの問いに答えながら解き明かす。伊藤野枝と大杉栄の共訳で、1923年8月にアルスから刊行された。野枝は巻頭の「訳者から」で、お伽話よりも本当の話を子どもに届けたいと述べ、虫の話を省いた先行の抄訳に対して全体を訳した意義を記している。刊行の翌月、二人は関東大震災の混乱の中で殺害された。

あらすじ

ポオル叔父さんの家には、姪のクレエル、甥のジユウルとエミルの三人の子供と、ジヤツク爺さん、アムブロアジヌ婆さんが暮らしている。ある夕方、婆さんのお伽話に倦きた子供たちが本当の話を聞きたがると、叔父さんは蟻の話を始め、以後毎晩、身近な不思議を問答を交えながら語ってゆく。蟻の都会と蟻が世話する虫、牝牛や梨の木を手がかりにした樹木や動物の寿命、湯沸しから始まる金属と鍍金、毛皮・亜麻・綿・紙・本・印刷の話が続き、蚕の変態と絹、蜘蛛の網と狩り、毒虫や蝮や蠍、蕁麻、行列虫といった虫の話がたっぷりと語られる。嵐の晩には電気と猫や紙の実験、フランクリンの避雷針、雲、音の速さ、雨を説き、噴火山とポンペイを滅ぼした噴火を記したプリニウスの話、湯の煮え立つ茶釜から機関車へと話が移る。世界の果てへの旅の話から地球、空気、太陽、昼と夜、一年と四季へ進み、ベラドンナの実をきっかけに有毒植物、花と果実、花粉、土蜂、茸と森、地震と地下の熱、貝殻・蝸牛・真珠、海と流れる水を語る。最後に蜜蜂の分封、蜜蝋、蜜房、蜂蜜、女王蜂の話を一番の楽しみとして取っておいた叔父さんは、取り入れの季節が来たのでお話はひとまずおしまいにすると告げる。叔父さんは毎日畑へ出るようになり、エミルは久しぶりにおもちゃ箱のノアの箱船をのぞきに行く。

登場人物

冒頭部(原文より)

一 六人  或る夕方、まだ外がやう/\暗くなりかけた時分から、六人の人達は、みんな一とかたまりになつて集まりました。  ポオル叔父さんは大きな本を読んでゐました。叔父さんは、本を読むのは一番ためにもなり、また疲れをやすめるのに、これ程いゝものはないときめてゐますので、働いたあとでやすむ時には、いつも本を読みます。  ポオル叔父さんは勝れて立派な、信心深い人です。そして又『いゝパンのやうに』誰れにでも親切な人です。村では、叔父さんの学問が大変皆んなの助けになるので、ポオル先生と云つて非常に尊敬してゐます。

「科学の不思議」ファーブル(青空文庫)

末尾部(原文より)

『蜜蜂の話は、叔父さんの話のうちで一寸おもしろかつた。』とジユウルが云ひました。 『私もさう思ふよ』と叔父さんは同意しました。『だから、この話を一等おしまひまでとつておいたのだ。』 『何ですつて――おしまひですつて?』ジユウルが叫びました。 『叔父さんはもう私達にお話をして下さらないですか?』クレエルが尋ねました。 『まさかさうぢやないんでせう?』とエミルも云ひました。 『いくらでも、お前達の好きなだけしてあげるよ。だがね、それはあとでだ。もう取り入れ時が来たから叔父さんはその方に時間をとられてひまがないんだ。だから今はこれでおしまひにしておかう。』  それから後ポオル叔父さんは毎日畑に行つてゐて、夕方になつてももうお話をしませんでした。エミルはまたノアの箱船の処に行つて見ました。箱船の中でエミルはかびた象を見つけ出しました。あの蟻の話以来すつかりおもちや箱に御無沙汰をしてゐたのです。

「科学の不思議」ファーブル(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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