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この子を残して(永井隆)のあらすじ・登場人物

この子を残して逝かねばならぬのか

  • 社会
  • 家族

永井隆 1948年(昭和23年)

文字数
101,924字
読了目安
約3時間24分
表記
新字新仮名
種別
随筆
舞台
  • 長崎県

この作品について

長崎で被爆し、白血病で死期を悟った医師・永井隆が、遺される幼い二人の子に宛てて書いた記録。「この子を残して——この世をやがて私は去らねばならぬのか!」という叫びから始まり、原爆で妻を失った日のこと、科学と信仰、そして子どもたちへの願いが、二畳一間の如己堂の病床から静かに綴られる。戦後日本でもっとも広く読まれた本の一つ。

あらすじ

うとうとしていると、遊びから帰ったカヤノが冷たいほほを寄せて「ああ、……お父さんのにおい……」と言う。母のにおいを忘れたゆえ、せめて父のにおいなりとも——そのおさな心のいじらしさに、永井は胸を突かれる。「この子を残して——この世をやがて私は去らねばならぬのか!」。放射線医学を専門に選んだときから予感していた運命が、いま現実になろうとしていた。原爆は妻・緑の命を奪い、自らも白血病で余命いくばくもない。残されるのは中学生の誠一と幼いカヤノである。永井は、自分がいなくなった日にこの子が布団に顔をうずめて泣く姿を思い描き、せめてモンペつりのボタンを一人ではめられるようになるまで、と願う。以下、原爆投下のその日の光景、救護に走りまわった日々、妻の骨を拾ったときのこと、子どもたちとの何気ないやりとり、科学者としての反省、そして戦争と平和についての考えが、断章のかたちで積み重ねられてゆく。真理と愛、働くことの意味、死をどう受け入れるか——いま話しても分からないだろうから書いておいて後で読んでもらうこと、それをそのまま書いたのだと永井は記す。二畳一間の庵「如己堂」からの窓の外では、誠一が瓦のかけらを運び、カヤノがつるばらの花で独りままごとをしていた。

登場人物

冒頭部(原文より)

 うとうとしていたら、いつの間に遊びから帰ってきたのか、カヤノが冷たいほほを私のほほにくっつけ、しばらくしてから、 「ああ、……お父さんのにおい……」 と言った。  この子を残して――この世をやがて私は去らねばならぬのか!  母のにおいを忘れたゆえ、せめて父のにおいなりとも、と恋しがり、私の眠りを見定めてこっそり近寄るおさな心のいじらしさ。

「この子を残して」永井隆(青空文庫)

末尾部(原文より)

 ここから見ていると、誠一は瓦のかけらをもっこで担いで捨てに行くところ、カヤノはつるばらの花を有田焼のかけらに盛って独りでままごとをしている。この兄妹が大きくなってから、私の考えをどう批判するだろうか? 五十年もたてば、今の私よりずっと年上になるのだから、二人寄ってこの書をひらき、お父さんの考えも若かったのう、などと義歯を鳴らして語り合うかもしれないな。

「この子を残して」永井隆(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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