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狼の王ロボ(シートン)のあらすじ・登場人物

毒にも罠にもかからぬ狼王

  • 冒険
  • 翻訳

シートン 訳者 薄田斬雲 1938年(昭和13年)5月 「少年倶楽部」

文字数
8,862字
読了目安
約18分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

野生動物の物語で知られる博物学者で画家のアーネスト・トムソン・シートンの代表作を、ジャーナリストで文筆家の薄田斬雲が少年向けに訳したもの。講談社の雑誌『少年倶楽部』1938年(昭和13年)5月号に「動物物語」として掲載された。原作の Lobo, the King of Currumpaw は1898年の短編集『私の知る野生動物』の巻頭に置かれた一編で、日本では「シートン動物記」の「狼王ロボ」として親しまれ、多くの訳や子ども向けの再話がある。シートンが実際にこの地で狼狩りに携わった体験がもとになっている。舞台はアメリカ南西部のカランポーの谷(作中では北部メキシコの川とされる)。牧場の家畜を襲い、毒餌にも罠にもかからない狼の群れの王ロボに懸賞金がかけられ、語り手の「私」が友人に招かれて退治に乗り出す。訳文は冒頭に訳者の短い紹介を置き、「さんざんな失敗」「毒殺の計」といった小見出しで場面を区切って、少年読者にも追いやすい平明な口語で語られる。

あらすじ

北部メキシコのカランポーの谷では、灰色の大きな狼ロボが率いる群れが牧場の家畜を荒らし、その首に一千ドルの懸賞がかけられた。土地の友人から誘いの手紙を受けた「私」は、狼狩りの味が忘れられず、すぐにカランポーへ乗りこむ。猟犬を連れてやって来たテキサスの男タンナリーも、起伏が多く川の入りくんだ谷でロボの群れに逆襲され、すごすごと引きあげたばかりだった。「私」は人の臭いを消して毒入りの餌を仕掛けるが、ロボは餌を食べずにくわえ集め、一か所に積み上げてみせる。ロボの群れは羊の番をする山羊を先に殺して羊を散らしたり、自分でかみ殺した若い牝牛しか食べなかったりと、ずる賢くぜいたくだった。取り寄せた罠もロボは一つ一つ掘り出してしまう。足跡を調べた「私」は、ロボの前を歩くことを許されている白い狼ブランカが雌であり、ロボの妻であることに気づく。牛の首のまわりに罠を仕掛けると、ブランカがかかり、「私」たちはブランカを殺す。その夜からロボは悲しげな声で妻を呼びながら一頭で谷をさまよい、我を忘れて家のそばまで来るようになる。「私」は百三十個の罠を埋め、ブランカの死体を引きずってその臭いを移しておく。やがて北の谷で、罠にかかったまま二昼夜もがきつづけて疲れきったロボが見つかる。ロボは最後まで屈せず、生け捕りにされて杭につながれてからも、出された肉にも水にも見向きもせず、かつての領地である草原を見つめつづけた。翌朝、ロボは眠るように息絶えていた。「私」はロボの亡骸をブランカのかたわらに並べてやり、ロボはやはり王様だったという羊飼いの言葉に、黙ってうなずく。

登場人物

冒頭部(原文より)

「カランポーの谷の王様おおかみロボの首に、一千ドルの懸賞がかけられた。」  このうわさは、土地の新聞から全メキシコへひろまった。カランポーというのは、北部メキシコを流れている川の名だ。その川の流域には、広々とした草原が開け、それが大きな牧場になっていた。ところがこの谷に一群のおおかみがすんでいて、しきりに家畜をあらす。そのおおかみの群れの王と見られるのは、土地の人々からロボと呼ばれる、まことに悪がしこく獰猛なやつであった。  土地の羊飼達はもちろん、よそからもおおかみ狩りを自慢の連中が続々とやってきて、この悪獣を退治しようとしたのであったが、いずれも失敗して引きあげる。そこでこの一千ドルの懸賞広告が新聞にでたのである。

「狼の王ロボ」シートン(青空文庫)

末尾部(原文より)

 力尽きたしし、翼の自由を失ったわし、またはめすを失ったはとのように、ロボも妻のブランカにさきだたれて力をおとし、この世に望みを絶ったのであろう。翌朝起きてみると、かれはしずかに眠るが如く横たわって冷たくなっていた。  私はその頸から鉄鎖を取り、羊飼いに手伝わせて、ロボをブランカの死体をおいた小舎へ運び入れて、そのかたわらに並べてやった。  そのとき羊飼いはいった。 「ロボはやっぱり王様だったな。その死に方まで……」  私は、この羊飼いが、私の心持ちをそのままいってくれたような気がして、だまってなんどもうなずいたのだった。

「狼の王ロボ」シートン(青空文庫)

名文

「カランポーの谷の王様おおかみロボの首に、一千ドルの懸賞がかけられた。」

シートン『狼の王ロボ』の書き出し。北部メキシコの牧場を荒らす狼王の噂から、知恵比べの物語が始まる。少年向けの平易な訳文。

りこうぶった私の計略は、狼王ロボのためにすっかり裏をかかれてしまったのである。

苦心の毒餌を、ロボが食べずに一か所へ積み上げていたと知った場面。人間の策をことごとく見抜く狼の賢さに、語り手が舌を巻く。

「ロボはやっぱり王様だったな。その死に方まで……」

捕らえられたロボが息絶えたのち、羊飼いがもらす言葉。誇り高い狼の最期に、語り手も黙ってうなずく。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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