宝島(スティーヴンソン)のあらすじ・登場人物
一枚の地図から始まる航海
- 冒険
- 翻訳
- 文字数
- 191,053字
- 読了目安
- 約6時間22分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
スコットランドの作家ロバート・ルイス・スティーヴンソンが少年雑誌『ヤング・フォークス』に連載し、1883年に単行本として刊行した海洋冒険小説を、佐々木直次郎が訳したもの。1935年(昭和10年)に岩波文庫から刊行された。継子と遊びながら描いた架空の島の地図から物語が生まれたことはよく知られている。語り手は、海辺の宿屋「ベンボー提督屋」の息子ジム・ホーキンズ。頬にサーベル傷のある老水夫が泊まり込んだことをきっかけに、ジムは海賊フリント船長が財宝を埋めた島の地図を手にし、地主や医師とともに帆船ヒスパニオーラ号で南の海へ乗り出す。大人になったジムが回想する一人称の語りで、船乗りたちの荒っぽい言葉づかいや帆船の暮らしが生き生きと描かれ、一本脚の料理番ジョン・シルヴァーの印象的な人物像でも知られる。佐々木訳は巻頭に作者の序詩を掲げ、巻末に船の用語や当時の風俗を補う詳しい注を付けている。
あらすじ
イギリスの海辺の宿屋「ベンボー提督屋」に、頬にサーベル傷のある老水夫が泊まり込む。「船長」と呼ばれるこの男は何者かを恐れて海の見張りを欠かさなかったが、やがて昔の仲間の黒犬が現れ、船長は彼と争った後に倒れる。持ち直したものの、盲人ピューに「黒丸」を渡されると再び発作を起こして死ぬ。宿屋の息子ジム・ホーキンズは、母とともに船長の衣類箱を開け、海賊どもに襲われる寸前に油布の包みを持ち出した。中にあったのは、悪名高い海賊フリント船長が財宝を埋めた島の地図だった。地主のトゥリローニーと医師リヴジーはさっそく船を仕立て、ジムを給仕として、スモレット船長の指揮するヒスパニオーラ号でブリストルを出帆する。ところが航海の終わり近く、林檎樽にもぐりこんだジムは、一本脚の料理番ジョン・シルヴァーがフリントの元手下で、乗組員の多くを抱き込んで反乱をたくらんでいることを聞いてしまう。島に着くと一行と海賊たちは戦いになり、ジムは島に置き去りにされていた元海賊ベン・ガンに出会う。地主たちが古い柵壁の丸太小屋に籠城して海賊の攻撃を退けるなか、ジムは単身で船に忍び込み、舵手イズレール・ハンズを倒して船を奪い返す。しかし小屋に戻ると、そこはすでに海賊たちの手に落ちていた。医師は地図をシルヴァーに渡して小屋を明け渡していたのである。捕らわれたジムを連れて海賊たちは宝の場所を掘るが、穴は空だった。宝はとうにベン・ガンが掘り出し、自分の洞穴に移していたのだ。待ち伏せていた医師たちに海賊は追い散らされ、ジムをかばったシルヴァーは命を助けられる。一行は宝を積んで帰途につくが、立ち寄った港でシルヴァーは金貨の袋を一つ持って姿を消した。
登場人物
- ジム・ホーキンズ 宿屋「ベンボー提督屋」の息子。物語の語り手
- ジョン・シルヴァー 一本脚の料理番
- リヴジー先生 医師。航海に加わる
- トゥリローニー 大地主。船を仕立てる
- スモレット船長 ヒスパニオーラ号の船長
- ベン・ガン 島に置き去りにされた元海賊
- ビリー・ボーンズ 宿屋に泊まり込む老水夫。「船長」と呼ばれる
- イズレール・ハンズ ヒスパニオーラ号の舵手
冒頭部(原文より)
大地主のトゥリローニーさんや、医師のリヴジー先生や、その他の方々が、私に、宝島についての顛末を、初めから終りまで、ただまだ掘り出してない宝もあることだから島の方位だけは秘して、すっかり書き留めてくれと言われるので、私は、キリスト紀元一七――年に筆を起し、私の父が「ベンボー提督屋」という宿屋をやっていて、あのサーベル傷のある日に焦けた老水夫が、初めて私たちの家に泊りこんだ時まで、溯ることにする。 私は、彼が、船員衣類箱を後から手押車で運ばせながら、宿屋の戸口のところへのそりのそりと歩いて来た時のことを、まるで昨日のことのように覚えている。背の高い、巌乗な、どっしりした、栗色の男だった。タールまみれの弁髪がよごれた青い上衣の肩に垂れていた。手は荒れて傷痕だらけで、黒い挫けた爪をしていた。そしてサーベル傷が片頬にきたなく蒼白くついていた。私はまた覚えている。彼は入江を見し、そうしながらひとりで口笛を吹いていたが、それから突然、その後もたびたび歌ったあの古い船唄を歌い出したのだった。―― 「死人箱にゃあ十五人―― よいこらさあ、それからラムが一罎と!」
「宝島」スティーヴンソン(青空文庫)
末尾部(原文より)
シルヴァーのことは、私たちはあれから消息を聞いたことがない。あの恐しい一本脚の船乗はとうとう私の生涯からすっかり消え失せてしまった。しかし、恐らく彼は黒人の細君にめぐり逢って、多分まだその細君やフリント船長と一緒に安楽に暮していることだろう。そうであってほしいものと思う。というのは、あの世では彼の安楽になれる見込はごく少いのだから。 銀の棒と武器とは、私にはよくわからぬけれども、多分、フリントの埋めた処にまだあるのだろう。そして確かにそこにあろうがどうだろうが私の構ったことではない。牛と荷馬車の綱とでひっぱられようとも、私はあの呪われた島へはもう二度と行かないつもりだ。そして今でも私のみる一番の悪夢は、あの島の岸にどどうっと打ち寄せている波の音を聞く時か、または、「八銀貨! 八銀貨!」というフリント船長の鋭い声が耳の中に鳴り響いて、寝床の中でがばと跳び起きる時なのである。
「宝島」スティーヴンソン(青空文庫)
名文
すると鸚鵡は「八銀貨! 八銀貨! 八銀貨!」と非常に速いのに言い続け、息が切れはしまいかと思われるまで、またはジョンがハンケチを鳥籠の上に投げかけるまで、それを止めない。
片脚の料理番ジョン・シルヴァーの鸚鵡「フリント船長」が叫ぶ場面。海賊の名を持つ鳥の甲高い声が、航海に不穏な影を添える。
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。
同じ作家の作品
- 積木の町
- ジーキル博士とハイド氏の怪事件 1940年(昭和15年)11月