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相対性理論(アインシュタイン)のあらすじ・登場人物

汽車の中でも自然法則は同じ

  • 翻訳

アインシュタイン 訳者 石原純 

文字数
12,707字
読了目安
約25分
表記
新字新仮名

この作品について

アインシュタインが1911年1月16日にチューリッヒの自然科学協会で行った講演を、日本に相対性理論を紹介した物理学者で、アララギ派の歌人でもあった石原純が訳したもの。等速で走る汽車の中と地上の実験室とで自然法則は変わらないという相対性原理から説き起こし、光を伝えるエーテルをめぐる実験の食い違い、同時刻や物体の長さという考えに潜む「勝手な仮定」を順に検討して、特殊相対性理論の骨組みを示す。数式はわずかで、「です・ます」の語りかける口調で進む講演の形がそのまま訳に残る。訳は1930年刊の春秋社『世界大思想全集』第48巻に収められた。

あらすじ

講演はまず相対性原理を、静止した実験室と一様に走る汽車の中の実験室とで同じ自然法則が見出される、という例で説明する。旧来の力学はガリレイの原理とニュートンの方程式によってこの原理を満たしていたが、光を媒質の波とみなすと、その媒質であるエーテルが物体と一緒に動くかどうかが問題になる。流れる液体の中を通る光を調べたフィゾーの実験は、エーテルが物質と共には動かないことを示し、ローレンツは静止エーテルの理論を立てた。ところが、物質のエーテルに対する運動を確かめようとする実験はすべて否定的な結果に終わり、二つの事実は互いに矛盾するように見えた。アインシュタインはその原因を、時間と空間についての「勝手な仮定」、すなわち二つの出来事が同時刻かどうかは基準系によらず決まるということと、物体の長さは運動状態によらないということに求める。これらを捨て、相対性原理と光速度一定の原理を両立させる変換方程式を立てると、運動する物体は進行方向に縮み、動いている時計は静止した時計より遅れて進むことが導かれる。光速に近い速さで遠くまで飛ばしてから呼び戻した時計は、出発点に残った時計より遅れているという例も挙げられる。続いて、自然法則の式がこの変換で形を変えないという要請が理論の可能性を強く絞ること、カナル線の原子の振動数によって時計の遅れを確かめる見込みがあること、物体の慣性質量がエネルギーとともに増し、質量保存の法則がエネルギー保存の法則と一つに融合することを述べる。最後に、ミンコフスキーによる、時間を空間と同じ役目の坐標として扱う四次元の幾何学的な表し方に触れて結ぶ。

冒頭部(原文より)

「相対性理論」と名づけられる理論が倚りかかっている大黒柱はいわゆる相対性原理です。私はまず相対性原理とは何であるかを明らかにしておこうと思います。私たちは二人の物理学者を考えてみましょう。この二人の物理学者はどんな物理器械をも用意しています。そして各々一つの実験室をもっています。一人の物理学者の実験室はどこか普通の場所にあるとし、もう一人の実験室は一定の方向に一様な速さで動く汽車の箱のなかにあるとします。相対性原理は次のことを主張するのです。もしこの二人の物理学者が彼等のすべての器械を用いて、一人は静止せる実験室のなかで、もう一人は汽車のなかで、すべての自然法則を研究するならば、汽車が動揺せずに一様に走る限り、彼等は全く同じ自然法則を見出すでありましょう。幾らか抽象的にこう云うことも出来ます。自然法則は相対性原理によれば基準体系の併移運動に関しません。  私達は今この相対性原理が旧来の力学でどんな役目をもっていたかをみましょう。旧来の力学は第一にガリレイの原理の上に安坐しています。この原理に従えば、ある物体は他の物体の作用を受けない限り、直線的な一様な運動にあります。もしこの法則が上に云うた実験室の一方に対して成り立つならば、それはまた第二に対しても成り立ちます。私達はそのことを直接に直観から取り出すことが出来ます。私達はそれをしかしまたニウトン力学の方程式からも引き出すことが出来るのです。私達はその方程式をもとの基準体系に対して一様に動いているものへ転換させればよいのです。

「相対性理論」アインシュタイン(青空文庫)

末尾部(原文より)

 もう一言この理論が主として、悼ましくも余りに早く逝いた数学者ミンコウスキーによって得たところのはなはだ興味ある数学的補助について述べましょう。相対性理論の変換方程式は、それが x2+y2+z2−c2t2 なる式を不変量としてもつように作られています。時間 t の代りに虚数的変数を時間変数として導き入れますと、この不変量は x2+y2+z2+τ2 なる形を取ります。この際空間的坐標ならびに時間坐標は同じ役目をなします。この空間及び時間坐標の形式的等値性を相対性理論において更に押し進めますと、この理論のはなはだ見易い説明に達し、その応用をより容易くするのです。物理的出来事はある四次元間において云い表わされ、また出来事の空間的関係はこの四次元空間における幾何学的法則としてあらわれます。

「相対性理論」アインシュタイン(青空文庫)

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原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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