お墓の中の坊や(アンデルセン)のあらすじ・登場人物
墓地で母が見た夢
- 家族
- 翻訳
- 文字数
- 6,142字
- 読了目安
- 約12分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
アンデルセンが1859年に発表した童話(原題「Barnet i Graven」)を、北欧文学者の矢崎源九郎が訳したもの(新潮文庫『マッチ売りの少女 アンデルセン童話集Ⅲ』)。四つで世を去った一人息子を悼む母の姿を描く。悲しみのあまり神を見失った母は、ある夜ひとり墓地へ出かけ、そこで不思議な出来事に出会う。ごく短い作品の中に、幼い子を亡くした親の嘆きと、残された家族への務めという重い主題がまっすぐに込められている。祈りに近い、静かな語り口の一編である。
あらすじ
四つになる一人息子を亡くした母は、悲しみのあまり神を恨み、夜も昼も坊やのことばかり思いつづけて眠れなくなる。葬式がすんだある晩、母は家をぬけ出して小さな墓へ行き、涙を流す。すると喪服姿の死神があらわれ、ついてくる勇気があるかと問う。母がうなずくと地面がしずみ、気がつけば坊やのいる広間にいる。坊やは神さまのところへ行きたいが、母が泣くと離れられないと言う。母は引きとめるが、上から父や姉たちの呼ぶ声が聞こえ、残してきた家族を思い出す。そのとき夜が明け、坊やの姿は消え、母は墓の上に倒れている自分に気づく。母は永遠の魂を引きとめようとしたことと、生きている人への務めを忘れたことを神にわびて祈り、心が軽くなる。家へ帰ると、母は強くやさしい主婦になり、このなぐさめの力は墓の中の坊やのおかげだと家族に告げる。
登場人物
- おかあさん 四つの一人息子を亡くし、悲しみのあまり神を見失う
- おとうさん 妻と娘たちを見守る
- 坊や 死んだ末っ子。夢の中で母に語りかける
- 死神 喪服のずきんの人。母を坊やのところへ連れていく
冒頭部(原文より)
家の中は、ふかい悲しみで、いっぱいでした。心の中も、悲しみで、いっぱいでした。四つになる、いちばん下の男の子が、死んだのです。この子は、ひとり息子でした。おとうさんと、おかあさんにとっては、大きなよろこびであり、また、これから先の希望でもあったのです。 この子には、ねえさんがふたり、ありました。上のねえさんは、ちょうどこの年、堅信礼を、受けることになっていました。ふたりとも、おとなしくて、かわいらしい娘たちでした。けれども、死んだ子供というものは、だれにとっても、いちばんかわいいものです。それに、この子は末っ子で、ひとり息子だったのです。ほんとうに、悲しい、つらいことでした。
「お墓の中の坊や」アンデルセン(青空文庫)
末尾部(原文より)
「おまえは、いったいどこで、それほどの力と、それほどの心のなぐさめを、きゅうに、もらってきたんだね?」 おかあさんは、おとうさんにキスをし、それから、娘たちにもキスをして、こう言いました。 「神さまからいただきましたの。お墓の中の、坊やのおかげで」
「お墓の中の坊や」アンデルセン(青空文庫)
原文を読む
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