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カラマゾフの兄弟 上(ドストエフスキー)のあらすじ・登場人物

神と父をめぐる三兄弟

  • 心理
  • 家族
  • 翻訳

ドストエフスキー 訳者 中山省三郎 1935年(昭和10年)

文字数
409,233字
読了目安
約13時間38分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

ロシアの文豪ドストエフスキーが1879年から翌年にかけて発表した最後の長編『カラマゾフの兄弟』の上巻(第一篇〜第五篇)。中山省三郎訳(三笠書房、1935年。のち角川文庫)。父と三人の息子をめぐる物語に、神の存在、自由、信仰と悪への問いを託した、世界文学の頂点とされる作品。青空文庫で公開されているのは、現時点でこの上巻のみ。

あらすじ

地主フョードル・カラマゾフは、金に汚く好色で、二度の結婚でもうけた三人の息子をろくに顧みなかった。成長した息子たちが、父の住む町に集まってくる。粗暴で情熱的な長男ドミートリイは、遺産と、父と取り合っている女グルーシェニカをめぐって、父と激しく対立している。無神論者で聡明な次男イワンは、冷ややかな頭脳で世界の不条理を見つめる。心優しい三男アリョーシャは、修道院で長老ゾシマに仕えている。親子の争いの仲裁を口実に、一家は長老の庵室に集まるが、フョードルの道化じみた振る舞いで、集まりはかえって醜態に終わる。その後アリョーシャは、兄ドミートリイの熱烈な告白を聞き、父と兄のあいだに迫る不穏な空気を知る。さらに、イワンが語る叙事詩「大審問官」と、父に仕える下男スメルジャコフの陰気なふるまいが、物語に暗い影を落としていく。

登場人物

冒頭部(原文より)

 この物語の主人公アレクセイ・フョードロヴィッチ・カラマゾフの伝記にとりかかるに当たって、自分は一種の懐疑に陥っている。すなわち、自分は、このアレクセイ・フョードロヴィッチを主人公と呼んではいるが、しかし彼がけっして偉大な人物でないことは、自分でもよく承知している。したがって、『アレクセイ・フョードロヴィッチをこの物語の主人公に選ばれたのは、何か彼に卓越したところがあってのことなのか? いったいこの男が、どんなことを成し遂げたというのか? 何によって、誰に知られているのか? いかなる理由によって、われわれ読者は、この人間の生涯の事実の研究に時間を費やさなければならないのか?

「カラマゾフの兄弟 上」ドストエフスキー(青空文庫)

末尾部(原文より)

そして彼女が戸をたたいたら(スメルジャコフは女にどこをどうたたくかという例の合い図を教えておいたと、もう一昨日、フョードル・パーヴロヴィッチに報告した)、できるだけ早く扉をあけてやって、一秒もむだに玄関で待たせないようにすることが肝心だ、でないと、彼女が何かに驚いて逃げ出すようなことになったら、それこそたいへんである。フョードル・パーヴロヴィッチはずいぶん気がもめたけれど、彼の心がこれほど甘美な希望に浸ったことは、これまでついぞないことであった。今度こそ彼女は間違いなくやって来ると断言することができるのではないか!

「カラマゾフの兄弟 上」ドストエフスキー(青空文庫)

名文

美は恐ろしいばかりじゃない、神秘なんだ――それがこわいのだ。つまり悪魔と神が戦っていて、そしてその戦場が人間の心なんだよ。

長兄ドミトリイが弟アリョーシャに胸の内をぶちまける「熱烈なる心の懺悔」の一節。聖と俗に引き裂かれるカラマゾフ的な魂を言い当てる。

ねえ、アリョーシャ、僕は神様を承認しないわけではない、ただ『調和』の入場券をつつしんでお返しするだけのことだよ

次兄イワンが「大審問官」の直前にアリョーシャへ語る反逆の論理の結び。罪なき子供の苦しみの上に築かれる調和を拒む、名高い言葉。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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