いいなずけ(アンデルセン)のあらすじ・登場人物
こまとまりの恋
- 恋愛
- 翻訳
- 文字数
- 2,796字
- 読了目安
- 約6分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
アンデルセンが1843年に発表した童話(原題「Kjærestefolkene」。副題はこまとまりの意)を、矢崎源九郎が訳したもの(新潮文庫『人魚の姫 アンデルセン童話集Ⅰ』)。同じ引出しにいたこまとまりが主人公の短い恋の話で、プライドの高いまりと、一途なこまのすれちがいを描く。おもちゃたちの恋が、人間の恋にも通じる切なさとおかしさをもって語られる。
あらすじ
同じ引出しの中のこまが、モロッコがわの着物を着たまりに、いいなずけになってほしいと言う。まりは自分は上品な生まれだと、返事をしない。こまが赤や黄色にぬられて美しくなってからも、まりは、ツバメと半分婚約したようなものだと断る。ある日、まりは外で高くはねあがったきり行方知れずになり、こまはツバメと結婚したのだと思って、ますます恋しがる。幾年もたち、金をぬってもらったこまは、高くはねあがってごみ箱に飛びこむ。そこで、といの中に五年いて水ぶくれになった老いたまりに出会うが、まりは自分のことを語るばかりで、こまは何も言わない。女中がごみ箱をひっくりかえし、金のこまだけが部屋にもどる。まりがどうなったかはわからず、こまも昔の恋のことをそれきり口にしなかった。
登場人物
- こま マホガニーでできた、一途な男の子。のちに金をぬられる
- まり モロッコがわの着物を着て、自分を上品なお嬢さんと思っている
- ツバメ まりが半分婚約したと言う相手
冒頭部(原文より)
こまとまりが、ほかのおもちゃのあいだにまじって、同じ引出しの中にはいっていました。あるとき、こまが、まりにむかって言いました。 「ねえ、おんなじ引出しの中にいるんだから、ぼくのいいなずけになってくれない?」 けれども、まりは、モロッコがわの着物を着ていて、自分では、じょうひんなお嬢さんのつもりでいましたから、そんな申し出には返事もしませんでした。
「いいなずけ」アンデルセン(青空文庫)
末尾部(原文より)
「あら、こんなところに、金のこまがあるわ」と、言いました。 こうして、こまは、また、お部屋の中にもどって、名誉をとりもどしました。けれども、まりのほうは、それからどうなったか、わかりません。こまも、むかしの恋のことについては、それきりなにも言いませんでした。どんなに好きな人でも、五年ものあいだ、といの中にいて、水ですっかりふくれあがってしまっては、恋もなにもおしまいです。おまけに、ごみ箱の中で会ったのでは、いくらむかしの恋人でも、とてもわかるものではありません。
「いいなずけ」アンデルセン(青空文庫)
原文を読む
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