アプリで読む

無料・登録不要

宇宙の始まり(アレニウス)のあらすじ・登場人物

天地の始まりを人はどう考えたか

  • 翻訳

アレニウス 訳者 寺田寅彦 1931年(昭和6年)

文字数
170,121字
読了目安
約5時間40分
表記
新字新仮名

この作品について

電解質の研究でノーベル化学賞を受けたスウェーデンの物理化学者アレニウスが、天地の成り立ちについて人類が抱いてきた考えを、古い伝説から近代の天文学・物理学までたどった宇宙論の歴史。序は1907年8月にストックホルムで書かれ、1910年の改訂版で補われた。寺田寅彦がドイツ語訳から訳し、1931年に岩波文庫『史的に見たる科学的宇宙観の変遷』として刊行された(『宇宙の始まり』は後年の新版の題)。各地の創造神話、カルデアやエジプト、中国の天文観測、ギリシアの自然哲学、コペルニクスからニュートン、カント、ラプラスへの学説の流れ、エネルギーや無限の観念の導入までを扱い、昔の考えのうちに今日の学説の芽を探る。寺田は付記で、1910年夏にストックホルムのノーベル研究所で著者に会った思い出や、引用された詩の訳し方の苦心を記している。

あらすじ

著者は序で、過去の考え方を知ることが現代の見方を照らすとし、人類の自然認識がいまかつてない速さで進んでいることを述べる。本論はまず、宇宙の起源を考えたことのない民族から説き起こし、水を原始物質とする伝説、インドの創造神話、渾沌や宇宙卵の神話、フィンランドの創造伝説、洪水伝説など、各地の自然民の伝説を紹介する。続いてカルデア人、ユダヤ人、エジプト人の宇宙観と、ヘシオドスやオウィディウスの描く開闢を取り上げ、アメンホテプ四世の太陽礼拝、ツァラトゥストラ、宇宙の周期を説くインドの思想、スカンジナビアの詩を最も深い考察として評価する。さらに暦と時間の計測から始まった最古の天文観測、中国の宇宙観、ギリシアの自然哲学者と中世の後継者、コペルニクス、ブルーノ、ケプラー、ガリレオ、デカルトの渦動説を経て、ニュートンの重力の法則、ビュフォン、カント、ラプラスの太陽系生成論を論じる。後半は、恒星の運動や視差、分光器による観測、輻射圧などの新しい発見、太陽の熱源をめぐるマイヤーやヘルムホルツの説によるエネルギー観念の導入、空間と時間の無限、物質とエネルギーの不滅を扱う。結びでは、哲学者の直観と実証された科学の法則との隔たりを強調し、宇宙論の研究は無駄ではなく、自然の認識の進歩は人間の自由と人道の発達と歩みをともにしてきたと述べる。

冒頭部(原文より)

 宇宙の生成に関する自然民の伝説  発達の最低段階にある民族はただその日その日に生きてゆくだけのものである。明日何事が起ろうが、また昨日何事が起ったにしたところが、それが何か特別なその日その日の暮らしむきに直接関係しない限り、彼らにとってそれは何らの興味もないことである。宇宙というものについて、あるいはその不断の進展について、何らかの考察をしてみるというようなこともなければまたこの地球の過去の状態がおよそいかなるものであったかということについて何らかの概念をもつということすら思いも寄らないのである。今でも互いに遠く隔った地球上のところどころに、このような低い程度の民族が現存している。

「宇宙の始まり」アレニウス(青空文庫)

末尾部(原文より)

 顧みて過去数世紀の経過の間に人道の発達もまたますます急速な歩を進めてきたことを知るのは誠に喜ばしいことである。これについては既に少なからざる実例を挙げてきた。全体の上から見れば、万有を包含する自然界に関する諸概念は自由と人間価値とに関する諸概念と常に同時に進みまた停止したということは否み難い事実である。これは畢竟人類が進歩するにつれて、種々な方面の文化が全体にその領土を拡張するということに帰因するのはもちろんであるが、しかしまたここにもう一つの事情が関係している。すなわち、目の届く限りの過去において、一般に科学者というものが常に人道の味方としてその擁護に務めてきたからである。これは既に前に述べたファラオ並びに奇蹟を見せるその宮廷占星術者との伝説の中にも自ら現われているのである。  自然が我々に提供する進化の無限の可能性を曇らぬ目で認め得るほどの人々は恐らく、自分のため、またその近親、朋友、同志あるいは同国人のみの利害のために、詭計あるいは暴力によって四海同胞たる人類を犠牲にするようなことをしようとはしないであろう。

「宇宙の始まり」アレニウス(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

近い作品