家庭小説とは
- 分類
- 形式・ジャンル
- 読み
- かていしょうせつ
明治30年代、新聞に連載されて幅広い読者に読まれた、家庭内の人情の機微や女性の受苦を主題とする小説の呼称。深刻小説・観念小説が描いた社会の暗黒面への反動として広まったとされ、家の制度や因習に苦しむ女性が、愛や道徳によって救われる結末を持つことが多い。新聞が家庭の主婦や娘たちを読者として取り込もうとしたことが、その流行の背景にある。代表作は徳冨蘆花が明治31年(1898年)11月から翌年5月まで「国民新聞」に連載した『不如帰』で、肺結核を患う妻・浪子が、家の体面を重んじる姑によって夫と引き裂かれる悲劇を描き、明治期最大級のベストセラーとなった。同じころ、菊池幽芳は「大阪毎日新聞」に『己が罪』(明治32〜33年)、『乳姉妹』(明治36年)を連載して熱狂的な読者を得、中村春雨の『無花果』(明治34年)も同紙の懸賞小説から生まれている。「読売新聞」で連載された尾崎紅葉『金色夜叉』も、家庭の悲劇を描いた作品として家庭小説の性格を併せ持つと評されることがある。これらの作品の多くは新派劇の舞台にかけられて大当たりをとり、小説と演劇が互いの人気を高め合った。通俗的との批判も受けたが、近代小説の読者を家庭の女性へ大きく広げた点に意義がある。