モデル小説とは
- 分類
- 形式・ジャンル
- 読み
- もでるしょうせつ
実在の人物や実際に起きた出来事を素材にし、読者がそれと分かる形で描いた小説。作中の人物が誰を写したものかが話題になり、ときにモデルとされた当人の抗議や、名誉・プライバシーをめぐる争い(モデル問題)を引き起こす。日本では明治末、自然主義の作家たちが自分や身近な人々の生活をありのままに書こうとしたことで盛んになった。田山花袋の『蒲団』(明治40年)は、作者が女弟子への思いを告白したものとして受け取られ、私小説の源流とされる。島崎藤村は短編『並木』(明治40年)で、モデルとされた旧友たちの抗議を受けて本文を改めることになったが、その後も北村透谷ら「文学界」の仲間との青春を描いた『春』(明治41年)、姪との関係を告白した『新生』(大正7〜8年)と、身近な人々を描き続けた。有島武郎の『或る女』の主人公には、国木田独歩の最初の妻だった佐々城信子という実在のモデルがいる。太宰治の『斜陽』(昭和22年)は、太田静子の日記を素材に用いている。戦後には、三島由紀夫の『宴のあと』(昭和35年)をめぐって、モデルとされた元外務大臣がプライバシーの侵害を訴え、昭和39年(1964年)に日本で初めてプライバシーの権利を認める判決が出た。私小説と重なるところが大きいが、作者自身ではなく他人を写す場合にも用いられる呼び名である。