写本とは
- 分類
- その他
- 読み
- しゃほん
手で書き写して作られた本。印刷された本(版本)に対する語で、日本では、木版印刷が広まる江戸時代以前、書物の多くは写本の形で伝えられた。作者自身が書いたものを自筆本(自筆稿本)、それ以外を転写本と呼んで区別する。同じ作品でも、写された時期や写した人によって本文に違いが生じ、誤写や脱落、書き換えによって異本が生まれる。写す人が読みやすさのために言葉を補ったり、別の本と見比べて本文を取り合わせたりすることもあった。『源氏物語』では、鎌倉時代の藤原定家が整えた本文(青表紙本)と、同じころ源光行・親行の親子が整えた河内本、そのどちらにも属さない別本といった系統が知られ、定家は『土佐日記』でも紀貫之の自筆本を写した本を残している。『枕草子』や『徒然草』にも系統の異なる写本があり、章段の順序や本文が大きく異なる。作者の自筆本が現存しない古典では、古い写本を比較して、元の本文に近いものを探る作業が行われる。江戸時代に版本が広まってからも、出版が禁じられた内容や、部数の少ない学問の書物、秘伝の書などは写本で流通し、貸本屋が写本を貸し出すこともあった。写本は本文を伝えるだけでなく、書写した人の筆跡や書き入れ、装丁などを通して、作品がどのように読まれてきたかを伝える資料でもある。