通俗小説とは

分類
形式・ジャンル
読み
つうぞくしょうせつ

芸術性の追求よりも、広い読者を楽しませることを主眼に書かれた小説。とくに大正中期から昭和にかけて、新聞や婦人雑誌に連載された、現代の恋愛や家庭を題材とする長編小説を指す呼び名として使われた。純文学に対する語で、同じく娯楽を重んじながら時代小説や探偵小説を中心とする大衆文学とは、現代物の恋愛・家庭を描く点で区別されることが多い。明治30年代の家庭小説をその前身とし、大正9年(1920年)に「大阪毎日新聞」「東京日日新聞」に連載された菊池寛の『真珠夫人』が大評判となって、菊池を流行作家に押し上げ、ひとつの型を築いた。久米正雄・中村武羅夫らもこの分野で人気を集め、新聞の部数競争や婦人雑誌の発展とともに、作家の生活を支える場となった。一方で「通俗」という言葉には安易さを責める響きがあり、純文学の側とのあいだで価値をめぐる議論が繰り返された。横光利一は評論『純粋小説論』(昭和10年)で「純文学にして通俗小説」であることを唱え、両者の統合を説いている。戦後には、純文学と大衆文学の中間をねらう中間小説がこの役割を引き継いだ。

関連する用語

この用語に関わる作品

この用語に関わる作家