大根の葉(壺井栄)のあらすじ・登場人物
母について行きたい、幼い願い
- 家族
- 心理
- 文字数
- 24,860字
- 読了目安
- 約50分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 香川県
- 兵庫県
この作品について
1938年(昭和13年)に「文芸」へ発表された壺井栄の初期短編。小豆島を思わせる島の村を舞台に、母について神戸へ行きたいとせがむ幼い健の目を通して、貧しさのなかで身を削る母と、病んだ妹をめぐる一家の日々を描く。子どもの拗ねた気持ちと、それを包む母の疲れた優しさとが、大根の葉のような何気ない生活の細部に託されている。のちの「二十四の瞳」につながる、庶民の暮らしへの温かなまなざしが早くも現れた作品。
あらすじ
健の母は今夜また、赤ん坊の克子をつれて神戸の病院へ行くことになっている。健はどうしても一緒に汽船に乗って行きたいのだが、母はどうしてもよい返事をしてくれない。いつもならお祭りにも運動会にも克子を背負い健の手を引いて出かけてくれる母が、神戸へだけは連れて行ってくれないのだ。自分はまだ一度も汽船に乗ったことがないのに、赤ん坊の克ちゃんはこれで二度目になる——健の不平は膨らむばかりである。お土産を買ってきてやるからおばあさんの家で待っておれ、と母は繰り返す。だが健にはわからない。母がなぜ幾度も海を渡らねばならないのか、克子の身に何が起きているのか。留守番の日々、隣村の祖母の家で過ごす時間、そして帰ってきた母の顔。貧しい家計をやりくりし、子を思って身をすり減らす母の姿が、幼い健の視線の高さから少しずつ見えてくる。やがて夜道を背負われて帰る健の目に、秋のように澄んだ星空が映る。
登場人物
- 健 母について神戸へ行きたいとせがむ幼い男の子
- お母さん 赤ん坊を抱えて島と神戸を行き来する母
- 克子 健の妹。病を得て神戸の病院に通う赤ん坊
冒頭部(原文より)
一 健のお母さんは、今夜また赤ん坊の克子をつれて神戸の病院へ行くことになっている。健はどうにかしてお母さんについて神戸へ行きたいと思うのだったが、お母さんはどうしても、よい返事をしてくれない。部屋いっぱいに並べられた着類や、手まわりのものなどを大きな柳行李に入れたり、またそれを取り出してつめかえたりしているお母さんのそばにつっ立って、健はふくれかえっていた。
「大根の葉」壺井栄(青空文庫)
末尾部(原文より)
暗い海の上には、ゆっくりと流している漁舟の篝火が右に左に動いて、しばらくぶりに見る空は秋の夜のように星がかがやいている。 「まあ、きれいな星、見い健!」 お母さんは立ちどまって背の健をゆすりあげた。
「大根の葉」壺井栄(青空文庫)
原文を読む
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