柿の木のある家(壺井栄)のあらすじ・登場人物
村に二本とない、大きな柿の木
- 家族
- 文字数
- 15,464字
- 読了目安
- 約31分
- 表記
- 新字新仮名
- 舞台
- 香川県
この作品について
壺井栄の代表的な童話のひとつ。裏に大きな柿の木が一本立つ家に暮らす姉弟、フミエと洋一の日々を、木のめぐる季節とともに描く。おじいさんの自慢だった村に二本とない柿の木は、家族の歴史を見守る証人であり、実がなればみなが分け合う喜びの源でもある。子どもの目に映る家族の情愛と、暮らしのなかのささやかな出来事が、平明なことばで綴られる。1944年(昭和19年)の作品集「海のたましひ」に収められ、戦後に単行本「柿の木のある家」として刊行された。
あらすじ
フミエと洋一の家の裏には、子どもの一かかえもある大きな柿の木が一本立っている。柿はあたり年が一年おきだというのに、この木は毎年みごとに実をつけるので、生きていたおじいさんの自慢のたねだった。実の大きくてうまいことといったら、三太郎おじさんなど、うれるころになると子どものような顔をして毎年もらいにくるほどである。来年の春には枝を接がせてもらおうと言いながら、おじさんは春になるときまって忘れてしまう。そんな柿の木のもとで、姉のフミエと弟の洋一は日々を送っている。家の手伝い、近所との行き来、赤ん坊の世話——子どもたちの目に映る小さな出来事のひとつひとつに、家族の情愛と暮らしの手ざわりが宿る。やがて柿の葉が色づき、ちらちらと舞い落ちる季節がめぐってくる。乳をもらって満腹になった赤ん坊が、からだじゅうをゆすって笑うと、その笑いにさそわれたように、柿の葉もまた笑っているように見えるのだった。
登場人物
- フミエ 柿の木のある家の姉
- 洋一 フミエの弟
- 三太郎おじさん 柿の実がうれるころ、毎年もらいにくる近所の人
冒頭部(原文より)
一 フミエと洋一の家には、裏に大きな柿の木が一本あります。それは子どもの一かかえもあるほどりっぱな木でした。小さい木は幾本もありましたが、とびぬけて大きいのは一本だけです。柿のあたり年は、普通一年おきだということですが、この柿は毎年なるのでおじいさんが生きている時分にはじまんのたねでした。こんな柿は村に二本とないからです。
「柿の木のある家」壺井栄(青空文庫)
末尾部(原文より)
とあやしました。フミエにお乳をもらって、まんぷくの赤ん坊はごきげんで、からだじゅうをゆさぶってよろこびます。 「あかいから、あーかい。」 フミエがそれに答えると、また、きゃっ、きゃっと笑いました。柿の葉はまた二三枚、ちらちらと舞いおりてきました。それはほんとに赤ん坊の笑いにさそわれて、笑っているかのようでした。
「柿の木のある家」壺井栄(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。