共産食堂(クロポトキン)のあらすじ・登場人物
戦時のパリに生まれた共同の食卓
- 社会
- 翻訳
- 文字数
- 2,131字
- 読了目安
- 約4分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
ロシアの無政府主義者クロポトキンが、ロンドンの無政府主義紙『フリーダム』の九月号に寄せた短い時評を、大杉栄が訳したもの。第一次世界大戦下のパリで、労働組合や料理店が、払える人からは代金を取り、払えない人には無料で食事を出す共同の食堂を始めた事実を取り上げ、非常時の暮らしそのものが共産主義の正しさを示していると論じる。具体的な人数や運び方まで伝える報告の文章で、無政府主義者も建設的な仕事で実際的であり得ると説く。
あらすじ
大都市が包囲などの災禍に襲われれば、すべての人に食物を行き渡らせることが急務となり、勤労に応じた報酬という問題は影をひそめる、と無政府主義者は以前から主張してきた。戦乱の時期を迎えた今、パリでは御者と自動車運転手の労働組合が「ポポット」と呼ぶ共産食堂を開き、毎日三百人分の食事を、払える者には払ってもらい、払えない者には無料で出している。組合員以外の家族も拒まず迎え、食事の半分は組合と無関係の人々に渡っている。家まで食事を運ぶのかと冷笑した批評家たちに反し、ある有名料理店では出征兵士の妻たちのために日々二千四百人分あまりの食事を用意し、大半を自動車で各区へ配っている。ロンドンでも同志たちが乏しい資力で同じ食堂を組織しはじめた。クロポトキンは、共産食堂は無政府主義者が実際的であることを労働者に示す手段であり、やがて住居や被服の共産制度も実現するだろうと述べる。
冒頭部(原文より)
「明日ある大都市をして、包囲またはそれに類する何等かの災禍に襲わしめよ。諸君は共産主義の思想がたちまちにして実現されんとするのを見るだろう。『パン』の問題、すなわちすべての人に食物を供給する問題が、その都市の緊急問題となって、ある個人の勤労に対する報酬などという問題は影をひそめてしまうだろう。各人の必要は、食料品の共同貯蓄に対して、各人の分け前を要求する権利となるだろう。」 これ、経済学者等が「人はその勤労に従って報われる」という紳士閥的定則をくりかえしつつある間、無政府主義者が年来主張し来たったところである。 今や西欧諸国は禍乱の時期に遭遇しつつある。そしてわれわれは、共産主義的組織観に向う第一歩として共産食堂の観念がいかに急速に各所に瀰漫しつつあるかを見る。
「共産食堂」クロポトキン(青空文庫)
末尾部(原文より)
されば多数の同志等が、互いに接触して行く手段を、また建設的事業においても無政府主義者が実際的であり得ること、および自ら実際的であると称するものよりも――何となれば彼等はあらゆる革命的思想を抑圧する――よほど実際的であり得ることを労働者に示す手段を、この共産食堂のうちに求めているのもまさに当然である。 共産主義的思想の最善の伝道法は、すでに食物のこの供給によってなされている。なお引き続いて住居や被服の共産制度も、近く実現されるであろう。
「共産食堂」クロポトキン(青空文庫)
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