デカダンスとは
- 分類
- 文芸思潮
- 読み
- でかだんす
「衰退」「退廃」を意味するフランス語 décadence に由来し、19世紀末のヨーロッパ、とくにフランスに現れた文芸上の傾向を指す。もとはローマ帝国末期の頽廃を言う語だったが、文明の爛熟と没落を感じとる世紀末の気分を表すようになり、病的なまでに洗練された感覚や人工的な美、倦怠と虚無への傾きを特色とした。ボードレールを先駆とし、ヴェルレーヌやユイスマンス(『さかしま』)、イギリスのワイルドらがその代表とされ、芸術至上主義や唯美主義と深く結びついている。日本では明治末から大正にかけて、永井荷風が訳詩集『珊瑚集』でボードレールやヴェルレーヌを紹介し、北原白秋の歌集『桐の花』が都会の憂愁とデカダンスを歌うなど、耽美派の文学に受け継がれた。「デカダン」は放埒で退廃的な生き方を指す言葉としても広まり、太宰治は自作がデカダン小説と呼ばれることに掌編『デカダン抗議』で抗議している。敗戦後には坂口安吾が評論『デカダン文学論』で、デカダンスそのものを目的とするのではなく、「健全なる」贋道徳を憎み、自分を欺かずに堕ちることを恐れない生き方を求めると述べ、『堕落論』とともに無頼派の思想を示した。