義理と人情とは
- 分類
- その他
- 読み
- ぎりとにんじょう
江戸時代の町人文芸の中心的な主題。義理は、世間や家、主従、恩のある相手に対して人が果たすべき務めを指し、人情は、人間が自然に抱く愛情や情愛を指す。両者がぶつかり、板挟みになった人間の苦しみを描くことが、人形浄瑠璃や歌舞伎の悲劇の型となった。近松門左衛門『曽根崎心中』(1703年)は、友人にだまされて面目を失った手代の徳兵衛が、遊女お初との恋を貫くために死を選ぶ話であり、『心中天網島』は、紙屋の治兵衛が妻おさんへの義理と遊女小春への情の間で身を滅ぼしていく話である。近松は、身分の低い町人の男女に、武士の悲劇にも劣らない切実さを与えた。町人は、金や家の都合による結びつきと、思いのままにならない恋を同時に抱えていたため、この主題に深い共感を覚えた。世話物と心中物の底に流れるこの対立は、人情本の「人情」の語にも受け継がれ、のちには任侠や股旅ものなどの大衆文芸にも広がった。