心中物とは

分類
形式・ジャンル
読み
しんじゅうもの

心中や情死を題材とした、江戸時代の人形浄瑠璃・歌舞伎・歌謡のジャンル。元禄16年(1703年)4月に大坂・曾根崎の天神の森で起きた、手代と遊女の心中事件を、近松門左衛門がひと月ほどで劇に仕立てた『曾根崎心中』が大当たりをとると、心中物の連作が相次いでつくられた。『心中天網島』(享保5年・1720年)はその代表作の一つで、妻への義理と遊女への恋に引き裂かれた男の最期を描く。『曾根崎心中』の「此の世の名残夜も名残」や、『心中天網島』の「名残の橋づくし」のように、死へ向かう二人の道行を美しい詞章で飾るのが見せ場となる。物語は、義理に追いつめられた町人の男女が、この世で添えぬ恋を来世にかけるという形をとることが多い。この流行は現実の心中事件を増やしたともいわれ、幕府は享保7年(1722年)に心中物の出版と上演を禁じ、翌年には心中を「相対死」と呼ばせて、死者の葬儀を許さず、生き残った者を厳しく罰する定めを設けた。美しい情死を描く心中物に対し、近松の『女殺油地獄』は、同情の余地のない主人公を描いた異色の世話物とされる。

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