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心中天網島(近松門左衛門)のあらすじ・登場人物

義理と恋の網にかかる夜

  • 恋愛
  • 古典

近松門左衛門 1720年12月

文字数
18,311字
読了目安
約37分
表記
新字旧仮名
舞台
  • 大阪府

この作品について

近松門左衛門の人形浄瑠璃。1720年(享保5年)12月に大坂・竹本座で初演された世話物で、上・中・下の三巻から成る。同じ年の10月に大坂・網島の大長寺で起きた紙屋の主人と遊女の心中事件を題材にしている。天満の紙屋の主人・治兵衛は、女房おさんと二人の子がありながら、曽根崎新地の遊女・紀伊国屋小春と深い仲になる。小春には客の太兵衛が身請けの話を持ちかけ、治兵衛との仲は周囲に知れて二人は追いつめられていく。そこへ、夫の命を案じたおさんが小春へ手紙を送ったことから、女どうしの義理が生まれ、治兵衛の兄・孫右衛門や、おさんの父・五左衛門も加わって事態はこじれていく。妻への義理と遊女への恋の板ばさみになった男が、最後に選ぶ道を描く。蜆川から網島へ向かう道行「名残の橋づくし」は、橋の名を詠み込んだ名文として名高い。情と義理に引き裂かれる人々を描いた、近松の世話物を代表する一作。本書は「近代日本文学大系」第7巻(国民図書、1928年)による原文で、国立国会図書館が公開する底本の画像とOCRテキストを照らし合わせて起こし、収録した。

あらすじ

【上之巻】神無月、蜆川の遊里。天満の紙屋の主人・治兵衛は、紀伊国屋の遊女・小春と深い仲になり、女房おさんと子供たちのいる家を顧みなくなっている。小春には太兵衛が身請けを迫っており、治兵衛との仲を言い散らしていた。小春は河庄という茶屋で、頭巾の侍の客の席につく。この侍の正体は治兵衛の兄で粉屋の孫右衛門で、弟を案じ、変装して小春の本心を確かめに来ていた。格子の外で立ち聞きしていた治兵衛は、小春の言葉を心変わりと受け取って逆上するが、かえって侍に取り押さえられる。頭巾を取った侍が兄と知って平伏した治兵衛は、小春と取り交わした起請文を返し、別れると誓う。その中には、おさんが小春に宛てた手紙も混じっていた。【中之巻】十夜の頃の夕暮れ。家では、おさんが子供たちの世話をしながら、塞ぎ込む治兵衛を案じている。小春がやがて太兵衛に身請けされると聞いた治兵衛は、小春が死を決めていると知らされる。おさんは、夫の命を頼むと小春に手紙を書いた自分のせいだと言い、小春を死なせては女の義理が立たないと、簞笥の着物をすべて質に入れて身請けの銀を整えようとする。そこへおさんの父・五左衛門が訪ねて来る。風呂敷包みの着物から事情を知った五左衛門は、治兵衛を罵って誓紙を引き裂き、泣きすがる娘を無理やり連れ帰って離縁させる。【下之巻】丑三つ時、蜆川の茶屋。治兵衛は小春を連れて、鬼の見ぬ間に茶屋を抜け出す。二人は橋の名を詠み込んだ道行を重ねながら、夜の明ける前に網島の大長寺の近くへたどり着く。死に場所と定めたところで、治兵衛は髪を切って出家の身となり、小春もまた髪を切る。夜明けの鐘が鳴るなか、治兵衛は脇差で小春を刺し、自らは首をくくって死ぬ。翌朝、漁夫が二人を見つけ、人々は涙ながらに心中の噂を言い広めた。

登場人物

冒頭部(原文より)

橋の名さへも梅桜、花を揃へし其の中に、南の風呂の浴衣より、今此の新地に恋衣、紀の国やの小春とは、此の十月に仇し名を、世に遺せとの印かや。

「心中天網島」近松門左衛門(青空文庫)

末尾部(原文より)

朝出の漁夫が綱の目に見付けて、「死んだヤレ死んだ。出逢へ/\。」と声々に、言ひひろめたる物語、直に成仏得脱の誓の綱島心中と、目ごとに涙をかけにけり。

「心中天網島」近松門左衛門(青空文庫)

名文

頃は十月十五夜の、月にも見えぬ身の上は、心の闇の験かや。

近松門左衛門『心中天網島』の道行「名ごりの橋づくし」の一節。十月十五夜の月にも見えぬ身の上を、心の闇に重ねて嘆く。

原文を読む

原文はアプリに収録しています(縦書きで読めます)。底本:「近代日本文学大系」第7巻 近松門左衛門集 下(国民図書、1928年)。国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている底本の画像と、同館「次世代デジタルライブラリー」のOCRテキスト(パブリック・ドメイン)をもとに、画像と照らし合わせて起こし、本文だけを収録した(ルビ・註の印・曲節の指定・解題・註釈は省いた)。旧字は新字に改めた(仮名遣いは底本のまま)。

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