本格と変格とは
- 分類
- その他
- 読み
- ほんかくとへんかく
日本の探偵小説で、作品の傾向を二分した呼び方。論理的な推理を軸に、犯人探しの謎解きを主とする作を「本格」、怪奇、幻想、猟奇、変態心理、空想科学などの要素を主とする作を「変格」と呼んだ。大正末から昭和初期にかけて、創作の探偵小説が雑誌「新青年」を中心に急速に数を増すなかで、探偵小説の書き手たちの間で使われるようになり、甲賀三郎が大正末に謎解きを重んじる作を「本格」と呼んで、それ以外の作と区別したのが始まりとされる。これに先立ち、評論家の平林初之輔は大正15年(1926年)の「探偵小説壇の諸傾向」で、謎解きを主とする健全な傾向と、異常な心理や病的な世界を描く傾向とを分けて論じている。江戸川乱歩の初期の短編は、暗号を解く『二銭銅貨』のような論理的な謎解きの作風から始まったが、のちに『人間椅子』のような猟奇や怪奇の色合いを強め、変格の代表と見なされた。一方、甲賀三郎は『琥珀のパイプ』などで、本格派を代表する作家として知られる。夢野久作・小酒井不木・海野十三らの作も、その多くが変格に数えられた。昭和11年(1936年)前後には、探偵小説は芸術たりうるかをめぐって甲賀三郎と木々高太郎が論争している。戦後は「変格」の語はあまり使われなくなり、怪奇・幻想の作は別のジャンルとして扱われるようになったが、「本格」の語は「本格推理」「本格ミステリ」として今も生きており、この区分はのちの推理小説の議論にも影響を与えた。