教養小説とは

分類
形式・ジャンル
読み
きょうようしょうせつ

主人公が人生のさまざまな経験を通して精神的に成長し、人格を形成してゆく過程を描く小説。ドイツ語の「ビルドゥングスロマン」の訳語で、成長小説、自己形成小説ともいう。ゲーテの『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』(1795〜96年)が典型とされ、19世紀のドイツの哲学者ディルタイがこの語を広めた。主人公は、恋愛、友情、挫折、芸術との出会いなどを通じ、社会の中での自己の役割を見出してゆく。物語はしばしば主人公の少年時代や青年時代から始まり、親元を離れて世の中に出ていく旅や遍歴の形をとる。ドイツ文学で発達したが、ディケンズの『デイヴィッド・コパフィールド』、ロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』、ヘッセの『車輪の下』など、ヨーロッパ各地の小説にも同じ系譜の作品がある。日本では、熊本から上京した青年が新しい学問や恋愛に戸惑う夏目漱石の『三四郎』(明治41年)や、作家を志す青年の東京での日々を描いた森鴎外の『青年』(明治43年)が、近代の青春の自己形成を描いた作品として、この系譜で語られることが多い。昭和に入ってからも、下村湖人が里子に出された少年の成長を長い年月にわたって描いた『次郎物語』(昭和16年〜)や、山本有三の『路傍の石』などが、少年が困難のなかで人格を築いていく物語として広く読まれた。主人公の成長をたどる構成は、現代の青春小説や児童文学にも受け継がれている。

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