社会小説とは

分類
形式・ジャンル
読み
しゃかいしょうせつ

社会の矛盾や問題を正面から取り上げ、社会批判の意図をこめて描いた小説。とくに明治30年(1897年)前後、日清戦争後の資本主義の発展にともなって貧富の差や労働問題が目立つようになったころ、民友社系の雑誌や、内田魯庵・高山樗牛らの評論で提唱された呼び名をいう。個人の悲劇や社会の暗部を描いた深刻小説・観念小説を一歩進め、社会の仕組みそのものを問う小説が求められた。内田魯庵の『くれの廿八日』(明治31年)は、理想を追う青年と家庭との対立を描いて、社会小説の試みとされる。徳冨蘆花は藩閥政府と上流社会の腐敗を批判する長編『黒潮』を明治35年(1902年)から「国民新聞」に連載し、キリスト教社会主義の立場に立つ木下尚江は、非戦を説く社会主義者を主人公にした『火の柱』(明治37年)や『良人の自白』で社会の不正を告発した。こうした作品は、明治30年代の社会主義運動の高まりと歩みを同じくしている。一方で、思想を前面に出すあまり人物が類型的になるという批判もあり、まもなく文壇の主流は自然主義へ移ったが、社会を描こうとする志は、大正期の労働文学やプロレタリア文学に受け継がれた。

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