新著百種とは
- 分類
- 結社・団体
- 読み
- しんちょひゃくしゅ
明治22年(1889年)、吉岡書籍店が刊行を始めた小説の叢書。同年4月1日に第1号として出たのが、尾崎紅葉の『二人比丘尼色懺悔』である。戦国の世を舞台に、一人の武士をめぐる二人の女の運命を、西鶴ばりの文体で描いたこの作は紅葉の出世作となり、叢書とともに硯友社の名を世に知らしめた。同年9月には第5号として幸田露伴の『風流仏』が刊行され、仏師の青年と花漬売りの娘の恋を描いたこの作で露伴も一躍注目を集めた。二人の作家が同じ叢書から相次いで文壇に躍り出たことは、のちに「紅露時代」と呼ばれる全盛期の出発点となった。明治24年(1891年)には、森鴎外がドイツ留学の体験をもとにした短編『文づかひ』もこの叢書から出している。紅葉は明治23年にも、『此ぬし』を春陽堂の叢書「新作十二番」の一冊として出した。硯友社は同人誌『我楽多文庫』から出発した結社で、こうした叢書での成功を足がかりに文壇の一大勢力へと成長した。新作の小説を一冊ずつ単行本の形で世に問うこの叢書は、雑誌・新聞と並ぶ新しい発表の場として、明治20年代の文壇の形成に大きな役割を果たした。