迷信解(井上円了)のあらすじ・登場人物
心こそ、妖怪の母である
- 怪奇
- 文字数
- 48,618字
- 読了目安
- 約1時間37分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
「妖怪博士」井上円了が、小学児童と家庭のために迷信を説き明かした通俗講義。当時新しく編纂された『国定小学修身書』の「迷信」の課をふまえ、そこで示された各項を敷衍しながら、狐狸や天狗、幽霊、方位や日柄の吉凶といった身近な迷信を一つずつ取り上げる。妖怪を偽怪・誤怪・仮怪・真怪に分ける円了独自の枠組みで整理し、真怪でないものを真怪と信じるのが迷信であると結論づけた。子どもにも読めるよう平易に語られている。
あらすじ
円了はまず、文部省の『国定小学修身書』にある迷信の課が簡短にすぎ、小学児童には了解しにくいところがあるとして、これを詳しく敷衍することを本書の目的に掲げる。狐が人を化かすという話、狸の腹鼓、天狗の神隠し、幽霊の出現、方位や日柄による吉凶、まじないや占い——世に伝わる迷信を次々に取り上げ、それぞれについて、事実の誤認から生じたもの、人の作為によるもの、自然の道理で説明のつくものを分けて示していく。そして妖怪を四つに分類する。人が偽ってこしらえた偽怪、見誤りや聞き誤りによる誤怪、自然の理で説明できる仮怪、そして真に不可思議な真怪。世人が偽怪や誤怪や仮怪を真怪と信じこむこと、それがすなわち迷信である。円了は新井白蛾や西村遠里の言を引き、天地万物ことごとく不思議であって、そのなかでも最も不思議なのは人の心だと述べ、「心は妖怪の母」であり「妖怪の巨魁」であると説く。結びでは、知識を磨き道理を究め、迷信に陥らず、上天に恥じぬ行いをせよと子らに諭す。
冒頭部(原文より)
緒言 今般文部省にて編纂せられたる『国定小学修身書』を一読するに、その中に迷信の課題ありて、懇切に迷信に関する注意を与えられしも、その文簡短にして、小学児童の了解し難きところなきにあらず。よって余は『修身書』にもとづき、その中に指示せられたる各項を敷衍詳解して、小学および家庭における児童をして、一読たちまち各種の妖怪を解し、迷信を悟らしむるの目的をもって、本書を講述したり。
「迷信解」井上円了(青空文庫)
末尾部(原文より)
かく妖怪を説明しきたりて、迷信はいずれにあるかといわば、つまり世人が偽怪、誤怪、仮怪のごとき、真怪にあらざるものを真怪のごとくに信ずるは、すべて迷信といわねばならぬ。古代のごとき人知のいまだ進まざりしときならば恕すべきも、今日のごとき教育も普及し、学問も開け、わが国はいわゆる東洋第一の文明国と、ほかより称せられ、自らも公言する以上は、その国民たるもの、なお迷信の淵に沈みおるありさまにては、実に国家の体面を汚し、国民の名誉を損するといわねばならぬ。
「迷信解」井上円了(青空文庫)
原文を読む
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