妖怪学(井上円了)のあらすじ・登場人物
妖怪を、心理学で解いてみせる
- 怪奇
- 文字数
- 59,382字
- 読了目安
- 約1時間59分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
哲学館の講義録に連載された、井上円了の妖怪研究の講義。狐火や蜃気楼のような物理的妖怪と、狐憑きや予言のような心理的妖怪とを分け、迷信の背後にある道理を一つずつ説き明かしてゆく。「妖怪博士」と呼ばれた円了の、応用心理学としての妖怪学である。
あらすじ
「妖怪学」とはいうものの、一科の完成した学問ではない——円了はそう断って講義を始める。目的は、妖怪の事実を集めて心理学上の説明を与え、心理研究の一助とすることにある。まず妖怪は大きく二つに分けられる。狐火、流星、不知火、蜃気楼のように物質の変化から生ずる物理的妖怪と、奇夢、神感、狐憑き、予言のように精神の変化から生ずる心理的妖怪である。後者はさらに、幽霊や天狗のように外界に現れるもの、巫女や卜筮や催眠のように他人の媒介によるもの、夢や夜行や妄想のように自己の身心に発するものへ分類される。円了はこの枠組みに従って、当時の人々が実際に語った怪異を次々に取り上げ、錯覚、暗示、偶然の暗合、俗説の力といった観点から解きほぐしてゆく。結びに置かれた偶然論では、偶然も蓋然も必然も本来同一であって、その区別は我々の知力の発達がまだ足りないところから生ずるのだ、と説く。妖怪を頭から否定するのではなく、その成り立ちを説明しようとする姿勢が全篇を貫いており、のちの民俗学・心理学の日本への定着を先取りした仕事として知られる。
冒頭部(原文より)
妖怪学は応用心理学の一部分として講述するものにして、これに「学」の字を付するも、決して一科完成せる学を義とするにあらず。ただ、妖怪の事実を収集して、これに心理学上の説明を与えんことを試むるに過ぎず。すなわち、心理学の学説を実際に応用して事実を説明し、もって心理考究の一助となすのみ。
「妖怪学」井上円了(青空文庫)
末尾部(原文より)
(付言)「妖怪学講義」ここに終わりを告ぐ。しかして、序言にも一言したるごとく、この講義が妖怪学として講述せるものにあらず、ただ心理学研究の一助となさんと欲して、これまで研究したる妖怪の事実につき、心理上の説明を与えたるのみ。読者、もし応用心理学の一部分として、この講義を参考せらるるならば、講者の本意を得るものなり。
「妖怪学」井上円了(青空文庫)
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