おばけの正体(井上円了)のあらすじ・登場人物
全国で集めたおばけ百三十話
- 怪奇
- 文字数
- 75,005字
- 読了目安
- 約2時間30分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
井上円了が、明治三十一年の『妖怪百談』を土台に、その後二十年の全国行脚で集めた新しい妖怪の実験談を加えて編み直した書。狐憑き、幽霊、火の玉、家鳴り、不思議な音や光といった百三十項の事例を、家庭と小学校で子どもが読めるよう言文一致の平易な文章で紹介し、その一つひとつに合理的な説明を与えていく。「愚民の迷心を安定せんとする本心より出でたるもの」という自らの言葉どおり、啓蒙者としての円了の面目が全編にあらわれている。
あらすじ
明治三十一年に『妖怪百談』とその続編を著した円了は、望外の好評を得ながらも、古人の書や古代の話に依っている点を不満として絶版のままにしていた。その後の二十年、全国を周遊するなかで直接に聞き知った妖怪の実験談、研究会員からの報告、地方の有志が寄せた新聞の切り抜き、自ら実地に探った事例——数百項の材料が集まった。そこから選りすぐった百三十項を、新たに『おばけの正体』として世に問うたのが本書である。狐に化かされた話、幽霊を見た話、火の玉が飛んだ話、天井から音がする家、動く仏像、予言の的中——各地から寄せられた生々しい報告に、円了は錯覚、暗示、思いこみ、自然現象、そして人の作為といった観点から次々に解答を与えていく。妖怪と迷信は密接に関わり、妖怪の八、九分どおりは迷信から起こるというのが円了の見立てである。結びでは、この仕事が閑人の道楽ではなく、愚民の迷心を安んずるための本心から出たものであること、宮内大臣を通じて天覧に供された光栄をも記し、なお妖怪の蘊奥を究めることを誓っている。
冒頭部(原文より)
緒言 明治三十一年のむかし、『妖怪百談』を著し、つぎにその「続編」を作りしが、望外にも世間より歓迎せられ、再三再四、版を重ぬるに至りたるも、数年前に残本全く尽き、久しく購読を謝絶しきたれり。その後さらに再版せんと思いしも、本書の内容が古人の書を引き、古代の話を伝えたるもの多ければ、そのまま再版するもおもしろからずと考え、絶版のまま今日に至れり。
「おばけの正体」井上円了(青空文庫)
末尾部(原文より)
以上はあまり妖怪学の効能を述べ過ぎるように見えて、売薬屋の効能書のように思う人もありましょうけれども、余が目的は、最初よりいたずらに閑人の道楽のつもりで始めたるわけではなく、全く愚民の迷心を安定せんとする本心より出でたるものなれば、世人にその趣意を誤解せざるように注意を願いたき一念より、かくのごとく効能を述べたる次第であります。
「おばけの正体」井上円了(青空文庫)
原文を読む
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