みつ柏(泉鏡花)のあらすじ・登場人物
冥土と仙人と狐の三話
- 幻想
- 怪奇
- 文字数
- 9,985字
- 読了目安
- 約20分
- 表記
- 旧字旧仮名
- 種別
- 小説
この作品について
大正3年(1914)3月の日付をもつ泉鏡花の短編集。「曠野」「買はれた女」「狐」の三篇を収め、いずれも中国風の舞台で、冥土や仙人、狐の妖異をもの語る。江戸っ子口調の飛脚と牛頭鬼の妻の話、人買いに売られた娘の恐ろしい体験、美少年に化ける狐と放蕩の若旦那を、洒落た語り口で描く。
あらすじ
「曠野」。四川から燕州へ使いに出た飛脚の丁隷は、鬼門関で道に迷い、野中の閻魔堂で休む。堂の脇の牛頭鬼像の顔に蜘蛛の巣がかかっているのを払ってやり、荒野を行くと小川のほとりで菜を洗う女に会う。それは二年前に亡くなった女房だった。女房は今では牛頭鬼の妻となっており、丁は橋を飛び越えた途端に大河に隔てられ、女房の家に泊めてもらうことになる。帰宅した牛頭鬼は、丁の袖で顔を拭ってもらった恩を思い出して歓待し、丁を人間の世へ返してやる。「買はれた女」。国境を越えて売られた娘が、三年ぶりに故郷へ帰ってきて、仙人に買われた体験を語る。高い峰の館で金銀に囲まれて暮らすが、毎月一度、金の管で生き血を吸われる。あるとき黒雲が襲って龍が現れ、仙人はさらわれ、娘は助かる。「狐」。放蕩の若旦那が新しい情婦のもとから帰ると、妻の居室に美少年が入り込んでいる。短銃を持って踏み込むと、妻の隣にいるのは、新しい情婦のお好ちゃんだった。美少年とお好ちゃんは、実は一匹の妖狐が化けたもので、若旦那を翻弄したのち、窓から狐の姿で消えていく。
冒頭部(原文より)
「はゝあ、此の堂がある所爲で==陰陽界==などと石碑にほりつけたんだな。人を驚かしやがつて、惡い洒落だ。」 と野中の古廟に入つて、一休みしながら、苦笑をして、寂しさうに獨言を云つたのは、昔、四川都縣の御城代家老の手紙を持つて、遙々燕州の殿樣へ使をする、一刀さした威勢の可いお飛脚で。
「みつ柏」泉鏡花(青空文庫)
末尾部(原文より)
頭の上に、はた/\と掌を叩いて、呵々と高笑ひするのを、驚いて見れば、少年子、擧手高揖して曰く、吾去矣。 「御機嫌よう、失禮。」 と、變じて狐と成つて、白晝を窓から蝙蝠の如くに消えぬ。 此は教訓ではない、事實であると、本文に添書きがあるのである。
「みつ柏」泉鏡花(青空文庫)
原文を読む
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