猫吉親方(ペロー)のあらすじ・登場人物
猫一ぴきが残した財産
- 幻想
- 風刺
- 翻訳
- 文字数
- 5,821字
- 読了目安
- 約12分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
「長ぐつをはいた猫」の名で知られるシャルル・ペローの童話を、楠山正雄が訳した一篇(副題「またの名 長ぐつをはいた猫」)。遺産分けでただ一匹の猫しかもらえなかった末の息子が、その猫の知恵ひとつで運を開いてゆく。痛快なほらの積み重ねで進み、親ゆずりの財産より自分の知恵と腕を元手にせよ、という結びの教訓も添えられている。
あらすじ
貧しい粉ひき男が死に、三人の息子に残されたのは風車とろばと猫だけだった。末の息子の取り分は猫一匹きりで、「こいつを食べて毛皮で手袋をこしらえたら、あとは飢え死にするだけだ」と嘆く。ところが猫は「袋と長ぐつをください」と言い出し、それを手に入れるとうさぎや山うずらを次々に捕らえ、「カラバ侯爵からの献上品でございます」と王の御殿へ運びはじめた。やがて猫は主人を川で水浴びさせ、着物を隠して「侯爵さまが泥棒に着物を取られた」と騒ぎ立てる。王の馬車から降ろされた立派な衣装を着せられて、若者は同乗した姫にひと目で気に入られてしまう。先回りした猫は、道々の草刈りや麦刈りの百姓たちを脅して「この土地はカラバ侯爵のもの」と答えさせ、最後に本当の領主である人食い鬼の城へ乗りこむ。鬼をおだてて獅子に化けさせ、次に「ねずみのような小さなものには化けられまい」とそそのかして、飛び出したねずみを一口で食べてしまった。城の主となった主人はその日のうちに姫と結婚し、猫吉は大貴族に取り立てられる。
登場人物
- 猫吉 粉ひきの末の息子が相続した猫。知恵ひとつで主人を侯爵に仕立てる
- 末のむすこ 財産分けで猫だけをもらい、カラバ侯爵と名乗ることになる
- 王さま 献上品に喜び、侯爵を馬車に乗せる
- お姫さま 王の娘。侯爵にひと目で心を寄せる
- 人食い鬼 土地と城の本当の持ち主
冒頭部(原文より)
一 むかし、あるところに、三人むすこをもった、粉ひき男がありました。もともと、びんぼうでしたから、死んだあとで、こどもたちに分けてやる財産といっては、粉ひき臼をまわす風車と、ろばと、それから、猫一ぴきだけしかありませんでした。さていよいよ財産を分けることになりましたが、公証人や役場の書記を呼ぶではなし、しごくむぞうさに、一ばん上のむすこが、風車をもらい、二ばんめのむすこが、ろばをもらい、すえのむすこが、猫をもらうことになりました。すえのむすこは、こんなつまらない財産を分けてもらったので、すっかりしょげかえってしまいました。
「猫吉親方」ペロー(青空文庫)
末尾部(原文より)
あなたは、わたしどもにとっては、申しぶんのない方です。」と、いいました。 侯爵はそのとき、うやうやしく敬礼したのち、王様の申し出された名誉を、よろこんで、お受けすることにしました。そうしてその日、さっそくお姫さまと結婚しました。 さて、猫吉は、大貴族にとり立てられました。それからはもう、やたらにねずみを取ったりしないで、気らくに、その日その日をおくりました、と、さ。 親ゆずりの財産に、ぬくぬくあたたまっているよりも、若いものは、自分の智恵と、うでを、もとでにするにかぎります。
「猫吉親方」ペロー(青空文庫)
名文
「だんな、そんなごしんぱいはなさらなくてもようございますよ。そのかわり、わたしにひとつ袋をこしらえてください。それから、ぬかるみの中でも、ばらやぶの中でも、かけぬけられるように、長ぐつを一そくこしらえてください。そうすれば、わたしが、きっとだんなを、しあわせにしてあげますよ。ねえ、そうなれば、だんなはきっと、わたしを遺産に分けてもらったのを、お喜びなさるにちがいありません。」
遺産に猫しかもらえず嘆く三男に、猫が長ぐつを求める場面。ペロー『猫吉親方』(長靴をはいた猫)の知恵者ぶりが始まる。
原文を読む
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