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猫吉親方(ペロー)のあらすじ・登場人物

猫一ぴきが残した財産

  • 幻想
  • 風刺
  • 翻訳

ペロー 訳者 楠山正雄 1950年(昭和25年)5月

文字数
5,821字
読了目安
約12分
表記
新字新仮名

この作品について

「長ぐつをはいた猫」の名で知られるシャルル・ペローの童話を、楠山正雄が訳した一篇(副題「またの名 長ぐつをはいた猫」)。遺産分けでただ一匹の猫しかもらえなかった末の息子が、その猫の知恵ひとつで運を開いてゆく。痛快なほらの積み重ねで進み、親ゆずりの財産より自分の知恵と腕を元手にせよ、という結びの教訓も添えられている。

あらすじ

貧しい粉ひき男が死に、三人の息子に残されたのは風車とろばと猫だけだった。末の息子の取り分は猫一匹きりで、「こいつを食べて毛皮で手袋をこしらえたら、あとは飢え死にするだけだ」と嘆く。ところが猫は「袋と長ぐつをください」と言い出し、それを手に入れるとうさぎや山うずらを次々に捕らえ、「カラバ侯爵からの献上品でございます」と王の御殿へ運びはじめた。やがて猫は主人を川で水浴びさせ、着物を隠して「侯爵さまが泥棒に着物を取られた」と騒ぎ立てる。王の馬車から降ろされた立派な衣装を着せられて、若者は同乗した姫にひと目で気に入られてしまう。先回りした猫は、道々の草刈りや麦刈りの百姓たちを脅して「この土地はカラバ侯爵のもの」と答えさせ、最後に本当の領主である人食い鬼の城へ乗りこむ。鬼をおだてて獅子に化けさせ、次に「ねずみのような小さなものには化けられまい」とそそのかして、飛び出したねずみを一口で食べてしまった。城の主となった主人はその日のうちに姫と結婚し、猫吉は大貴族に取り立てられる。

登場人物

冒頭部(原文より)

一  むかし、あるところに、三人むすこをもった、粉ひき男がありました。もともと、びんぼうでしたから、死んだあとで、こどもたちに分けてやる財産といっては、粉ひき臼をまわす風車と、ろばと、それから、猫一ぴきだけしかありませんでした。さていよいよ財産を分けることになりましたが、公証人や役場の書記を呼ぶではなし、しごくむぞうさに、一ばん上のむすこが、風車をもらい、二ばんめのむすこが、ろばをもらい、すえのむすこが、猫をもらうことになりました。すえのむすこは、こんなつまらない財産を分けてもらったので、すっかりしょげかえってしまいました。

「猫吉親方」ペロー(青空文庫)

末尾部(原文より)

あなたは、わたしどもにとっては、申しぶんのない方です。」と、いいました。  侯爵はそのとき、うやうやしく敬礼したのち、王様の申し出された名誉を、よろこんで、お受けすることにしました。そうしてその日、さっそくお姫さまと結婚しました。  さて、猫吉は、大貴族にとり立てられました。それからはもう、やたらにねずみを取ったりしないで、気らくに、その日その日をおくりました、と、さ。  親ゆずりの財産に、ぬくぬくあたたまっているよりも、若いものは、自分の智恵と、うでを、もとでにするにかぎります。

「猫吉親方」ペロー(青空文庫)

名文

「だんな、そんなごしんぱいはなさらなくてもようございますよ。そのかわり、わたしにひとつ袋をこしらえてください。それから、ぬかるみの中でも、ばらやぶの中でも、かけぬけられるように、長ぐつを一そくこしらえてください。そうすれば、わたしが、きっとだんなを、しあわせにしてあげますよ。ねえ、そうなれば、だんなはきっと、わたしを遺産に分けてもらったのを、お喜びなさるにちがいありません。」

遺産に猫しかもらえず嘆く三男に、猫が長ぐつを求める場面。ペロー『猫吉親方』(長靴をはいた猫)の知恵者ぶりが始まる。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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