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霜凍る宵(近松秋江)のあらすじ・登場人物

冬の京都に、執着の底が抜ける

  • 恋愛
  • 心理

近松秋江 1924年(大正13年)

文字数
44,862字
読了目安
約1時間30分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 京都府

この作品について

「黒髪」「狂乱」に続く近松秋江の三部作の完結編。京都の女を追い求める男の執着はいよいよ底が抜け、板塀の蔭に身を隠して女の母親を尾行するような、みじめで滑稽な行動に至る。それでいて男の筆は自らを美化することなく、冷えきった冬の京都の街を歩く己の姿を、他人事のように突き放して写しとる。愛執の泥沼を描き尽くしたこの連作によって、秋江は私小説の一つの極限を示した。

あらすじ

懊悩と失望のうちに日を過ごしていた「私」は、一月なかばのある寒い朝、また当てもなく街へ出た。女のもといたあたりに心が惹かれて横町を歩いていると、建仁寺の裏門のあたりから、女の母親が深い襟巻をしてこちらへ歩いてくるのが目に入る。この機会をどれほど待ったか——「私」は板塀の蔭に身を忍ばせ、母親の行き先を尾けていく。幾つもの曲がり角を経て、母親は先々月に探しあてた路次裏の家へ入っていった。やはり女もあの家にいるにちがいない。今まで聞かされてきたことは何もかも嘘だったのだ。そう独りうなずきながら、「私」の疑いと未練はいよいよ深まってゆく。訪ね、待ち、覗き、問い詰め、罵り、また詫びる。京の冬の底冷えのなかで、男の執着はほとんど正気の縁を越えていく。やがて茶屋の女主人や若奴たちの口から、死んだ者の噂が語られる。追憶を新たにする彼女たちを前にして、「私」には自分の目前の境遇のほうが、はるかに憐れに思われるのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

     一  それからまた懊悩と失望とに毎日欝ぎ込みながらなすこともなく日を過していたが、もし京都の地にもう女がいないとすれば、去年の春以来帰らぬ東京に一度帰ってみようかなどと思いながら、それもならず日を送るうち一月の中旬を過ぎたある日のことであった。

「霜凍る宵」近松秋江(青空文庫)

末尾部(原文より)

 若奴がそういうと、女主人は、 「ふん、そうやったかなあ、わたしあの時どうしてたか内におらなんで、あとで聞いた。……死んだ時はそりゃあ可哀そうどしたで」 といって、また追憶を新たにする風であったが、私はそれよりも自分の目前の境遇の方がはるかに憐れであった。

「霜凍る宵」近松秋江(青空文庫)

原文を読む

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