本歌取りとは
- 分類
- 文体・技法
- 読み
- ほんかどり
よく知られた古歌(本歌)の語句を意識して取り入れ、もとの歌の情景や余情を背景に重ねて新しい歌をよむ技法。剽窃ではなく、読み手が本歌を知っていることを前提に、二つの歌のあいだに生まれる奥行きを味わわせるところに眼目がある。藤原俊成が余情の美を求めてこれを重んじ、その子・定家は『近代秀歌』『詠歌大概』などで、本歌から取るのは二句程度までとし、季節や主題をずらして本歌と重ならないようにするなど、その作法を細かく定めた。本歌には『古今和歌集』の歌や『伊勢物語』など、歌を学ぶ者なら誰もが知る古典が選ばれた。この技法を駆使した『新古今和歌集』(1205年)の歌は、幾重にも記憶を折り重ねた幽玄な世界を作り出している。物語や漢詩など和歌以外の作品を踏まえる場合は、本説取りという。同じ手法は連歌や俳諧にも受け継がれた。過去の作品を下敷きにして新たな作品を生むというこの発想は、近代の翻案や、古典の説話に材を得た芥川龍之介の王朝物にも通じており、日本文学の底を流れる方法の一つといえる。