ユーモア小説とは
- 分類
- 形式・ジャンル
- 読み
- ゆーもあしょうせつ
人を傷つけない穏やかなおかしみを主眼とし、日常の失敗や見栄、世間とのずれを笑いに包んで描く小説。日本では江戸の滑稽本や落語の伝統に、英米のユーモア文学の影響が加わって育った。明治38年(1905年)に『ホトトギス』で始まった夏目漱石の『吾輩は猫である』は、猫の目から人間たちの言動を滑稽に眺めた作品として名高い。この分野を開拓したのが英文学者の佐々木邦で、マーク・トウェインなどの翻訳を出発点に、明治42年(1909年)の『いたづら小僧日記』で注目され、家庭や会社勤めの可笑しみを描く作品を書き続けた。昭和5年(1930年)に『キング』に連載された『ガラマサどん』は、勤め運の悪い語り手が社長の自叙伝の代筆係にされる騒動を描いた代表作である。昭和初期には大衆雑誌がこの種の小説の舞台となり、昭和11年(1936年)には佐々木邦らがユーモア作家倶楽部を結成した。戦中・戦後には、太宰治が変わり者の老人の逸事を茶化す『黄村先生言行録』や、講演の速記録の体裁で老詩人の長口上を連ねる『男女同権』を書き、坂口安吾も『破門』『現代忍術伝』など、戦後の世相を笑う作品を数多く残した。梅崎春生の『ボロ家の春秋』(昭和29年)は、一軒のボロ家をめぐる意地の張り合いを描いて直木賞を受賞している。