破門(坂口安吾)のあらすじ・登場人物
情痴作家と弟子の娘
- 風刺
- 家族
- 文字数
- 10,747字
- 読了目安
- 約21分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 小説
この作品について
1947年(昭和22年)6月、「オール読物」に発表された坂口安吾のユーモア小説。情痴作家として悪名の高い「タイタイ先生」が、昔の友人の洋画家マリマリ夫妻に、娘の説教を頼まれる。先生は、自分の本を愛読する娘が酒場で働く様子を見に行き、気前よく遊ぶつもりが、逆に娘にやりこめられる。ふざけた名前の人物たちを使い、情痴作家を名乗る主人公の自虐を含んだ、戦後の風俗喜劇。
あらすじ
焼け出されて音信不通だった洋画家のマリマリ夫妻が、小説家のタイタイ先生を訪ねてくる。十九歳の娘が、タイタイ先生の愛読者で、恋愛を始めると宣言したので、説教してほしいというのだ。先生は恐縮するが、断りきれず、金を工面して、娘が働く盛り場の裏通りの酒場へ出かける。先生は豪遊したかったが、場末の小さな店でカストリ焼酎を飲むことになる。娘は先生を歓迎し、先生の主張をよく暗記していて、親の石頭を批判する。先生は説教どころかやりこめられ、娘が客から千円ほどをもらっていたことまで聞かされる。二人は食事をし、娘は先生に抱きつき、ホテルへ泊まりたいと迫る。先生はたじろぎ、返事に窮して帰ろうとする。娘は「先生も案外ウブなのね」と笑い、堕落は嫌いだ、先生も堕落しないで、と言って駆け去る。先生は観察の結果をマリマリ夫妻に報告せず、「破門」のはがきも握りつぶしてしまう。
登場人物
- タイタイ先生 情痴作家の張本人と悪名高い小説家
- マリマリ先生 焼け出された洋画家。タイタイ先生の旧友
- マリマリ夫人 先生の妻。夫に似ず気丈で口が達者
- マリマリ嬢 十九歳の娘。タイタイ先生の愛読者で、酒場で働く
冒頭部(原文より)
戦火に焼けだされて以来音信不通だつたマリマリ先生といふ洋画家の御夫婦がタイタイ先生といふ小説家を訪ねてきた。 マリマリ先生にはたつた一人の娘がある。十八で女学校を卒業して今年十九であるが、ちかごろ恋をするから説教に及んでくれといふのである。 ところがタイタイ先生は情痴作家の張本人といふ天下に悪名の高い先生で、御当人が内閣情痴部といふやうなところで御説教を受けることがあつても、人の恋路に御説教の柄ではない。
「破門」坂口安吾(青空文庫)
末尾部(原文より)
マリマリ嬢は大先生にだきついてセップンした。そして、もう、いゝわ、さよなら、と云ひ残して駈け去つてしまつた。 したがつてタイタイ大先生は観察の結果に就てマリマリ夫妻に全然報告を送らぬことにした。「不肖の弟子につき破門」といふハガキを書いてみたこともあつたが、これも握りつぶしてしまつた。
「破門」坂口安吾(青空文庫)
原文を読む
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