アプリで読む

無料・登録不要

俗臭(織田作之助)のあらすじ・登場人物

百万長者の一族と体面の騒ぎ

  • 家族
  • 風刺

織田作之助 1939年(昭和14年)9月 「海風」

文字数
34,635字
読了目安
約1時間9分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 大阪府

この作品について

織田作之助が1939年(昭和14年)9月、青山光二らと出していた同人誌「海風」に発表した小説で、芥川賞の候補に挙がった。義兄の長兄の生涯に題材を得たとされる。和歌山県湯浅の没落した魚問屋に生まれた七人きょうだいが大阪へ出て、長兄の権右衛門は冷やしあめ売りや廃電球の買い取りから身を起こし、預金百万円の銅鉄商にまでなった。物語は、娘の縁談のため体面に気を張るその妻政江が、駆け落ちした気弱な義弟千恵造を疎んじて起こす一族の騒ぎから始まる。大阪弁と紀州弁の混じる会話と、人物を突き放して皮肉に眺める語りで、金と見栄にこだわる商家の人々を描いている。

あらすじ

大阪の銅鉄商児子権右衛門は、和歌山県湯浅の没落した魚問屋の七人きょうだいの長兄で、冷やしあめの露店や灸の興行、廃電球の買い取りなどから身を起こし、ついに預金百万円に達した。妻の政江は元助産婦見習で、娘たちの縁談のために体面を気にかけ、パーマネントをかけては周囲の噂の種になっている。気弱な弟の千恵造は、出自を打ち明けたカフェーの女給賀来子と結婚したが、政江に離縁を迫られて朝鮮へ駆け落ちしていた。長女千満子の前の縁談が破れたのは千恵造のせいだと思い込む政江は、伯爵家の次男との縁談が進むなか、正月の席で千恵造を離縁させるよう訴える。

権右衛門は兄弟の悪口を言うなと怒って政江を殴り、出て行けと言い放つ。だが新世界の漫才小屋で見知らぬ職人に何度も頭を下げたのをきっかけに、長崎県五島沖の沈没汽船の引き揚げに百万円を賭ける決心をし、児子兄弟合資会社を作って千恵造も仲間に入れると告げる。政江はその機を逃さず、自分と娘の名義に預金を分けさせる。元日の夜、権右衛門は無一文から金を作った若い日々を思い返す。

児子家の使いとして船司が朝鮮に渡ると、千恵造は兄の志に涙して賀来子と別れ、内地へ帰って三度目の妻を迎える。ところが賀来子もひそかに一緒に戻っていて、千恵造は天下茶屋に住む彼女のもとへ通い続けていた。新しい妻に満足できない千恵造は、婚礼から三月ほどで再び賀来子と駆け落ちする。その後、権右衛門は引き揚げた銅鉄を闇値で売った統制違反で拘引されて罰金刑を受け、政江は「神さん」に凝りだす。千満子と伯爵家次男の縁談は、持参金二万円で成立した。

登場人物

冒頭部(原文より)

 最近児子政江はパアマネントウェーヴをかけた。目下流行の前髪をピンカールしたあれである。明治三十年生れの、従ってことし四十三歳の政江はそのため一層醜くなった。つまりは、なか/\に暴挙であった。

「俗臭」織田作之助(青空文庫)

末尾部(原文より)

 その二つ。権右衛門の留置を機会に、政江は、「心霊研究」即ち、「神さん」に凝り出した。権右衛門の帰宅の日を「神さん」の先生がいい当てたのが動機である。「神さん」の先生は色魔ということだから、早晩、児子家では、家庭争議があるだろうと専ら噂されている。この間の事情に就ては述ぶべきことが多いが、何れはありきたりのものだ。  その三。児子千満子と某伯爵家次男との縁談は成立した。持参金は案外少くて、二万円だったということだ。

「俗臭」織田作之助(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品