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青春の逆説(織田作之助)のあらすじ・登場人物

自尊心だけが武器の青春

  • 青春
  • 心理

織田作之助 1941年(昭和16年) 「書き下ろし」

文字数
162,561字
読了目安
約5時間25分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 大阪府
  • 京都府

この作品について

1941年(昭和16年)、萬里閣から書き下ろしで刊行された織田作之助の長編小説。2月に第一部「二十歳」、7月に続編「青春の逆説」が出たが、続編は戦時下に発禁処分を受けた。青空文庫版は二部を通して収める。主人公の毛利豹一は、大阪の裏長屋に生まれ、高利貸の継父のもとで母お君の針仕事に支えられて育つ美貌の青年。人一倍強い自尊心とはにかみを抱え、女学生や喫茶店の娘、元人気女優との関わりも、恋より先に「負けてなるものか」という意地から始めてしまう。中学から三高、失業、業界紙、新聞社へと舞台を移しながら、作者は豹一の心の動きを皮肉まじりに逐一言葉にし、大阪弁の会話とともに昭和初期の大阪・京都の町と世相を描き込む。作者自身も三高を中退しており、自意識に振り回される青春を突き放した可笑しみで描いた一作である。

あらすじ

大阪・日本橋の裏長屋で浄瑠璃本の写本師の娘として育ったお君は、小学校教師の軽部に嫁いで豹一を産むが、夫は急死し、父の金助も電車にひかれて死ぬ。口癖の「私は如何でもよろしおま」のまま、お君は吝嗇な高利貸・野瀬安二郎の後妻となり、息子を中学へ通わせるため夜通し針仕事に追われる。母と継父の仲に傷ついた豹一は、人一倍の自尊心とはにかみを抱えた少年に育ち、首席を取っては白紙答案を出して級友に挑み、女学生の紀代子との交際も「獲得」の意地から始める。篤志家の給費生として三高に進むが、友人の赤井・野崎と京都の町を遊び歩き、喫茶店のお駒を見栄のだしに使ったあげく、欠席超過で落第して退学。大阪に戻って日本畳新聞社で帯封書きに耐えるが、苦心の記事を当局向けの別刷りの埋め草にされて辞めてしまう(第一部「二十歳」)。続く第二部で東洋新報の見習記者となった豹一は、奇人の先輩記者・土門に連れられた小屋で踊子の東銀子に心惹かれる。やがて監督との事件で女優を退き、キャバレエに出ている村口多鶴子の尾行記を任され、彼女を支配人佐古の企みから救ったことから親しくなり、与太者に殴り倒された夜に結ばれる。だが豹一は多鶴子の昔の男・矢野への嫉妬に苦しみ、二人の再会を目撃して絶望、自暴自棄のまま場末のカフェの女給友子を誘惑して捨てる。三月後、身ごもったと告げられた豹一は友子と結婚し、一人前の記者に昇進する。男の子の誕生に立ち会った豹一は、女の生理への嫌悪からようやく救われた思いを抱く。秋の雨のなか、孫の玩具を置いて帰っていくお君の姿で物語は閉じる。

登場人物

冒頭部(原文より)

第一章 一  お君は子供のときから何かといえば跣足になりたがった。冬でも足袋をはかず、夏はむろん、洗濯などするときは決っていそいそと下駄をぬいだ。共同水道場の漆喰の上を跣足のままペタペタと踏んで、 「ああ、良え気持やわ」

「青春の逆説」織田作之助(青空文庫)

末尾部(原文より)

 うなだれていた顔をあげて、ふとその方を見ると、真っ白に白粉をつけて、カフェの入口に立っている女の視線と打っ突かった。 「お兄さん。おはいりやすな」女は眼のまわりに皺をつくって、笑った。その笑いがネオンの色に、赤く染まり青く染った。  豹一はあわてて視線をそらし、寒々とした気持で坂を登りかけたが、だしぬけに、 (あの女を口説いてやろう)と、変なことを思いついた。  豹一はひきかえして、カフェのなかへはいって行った。入口に立っていた女が傍へ来た。  豹一はぱっと赧くなった切りで、物を言おうとすると体がふるえた。呆れるほど自信のないおどおどした表情と、すべての女に対する嫌悪と復讐の気持に凄んだ表情を、交互にその子供っぽい美しい顔に泛べながら、豹一はじっと女を見据えていた。  その夜、その女は豹一のものになった。自分から誘惑して置いて、 「お前は馬鹿な女だ」と、言ってきかせ、醜悪に固くなっている女のありさまを、残酷な快感を味いながら、じっと見つめた。そして、女をさげすみ、自分をさげすんだ。女は友子といい、豹一より一つ年下の十九歳だった。初心だが、醜い女だった。 「こんなことになったら、もうあんたと別れられへんわ」乾いた声で言った。なにか哀れだった。  豹一はふと、多鶴子もこんな哀れなありさまを矢野に見せたことがあるのだろうかと、辛い気持で見ていた。

「青春の逆説」織田作之助(青空文庫)

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