正義と微笑(太宰治)のあらすじ・登場人物
理想に燃える少年の日記
- 青春
- 心理
- 文字数
- 107,806字
- 読了目安
- 約3時間36分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
太宰治が1942年(昭和17年)6月、錦城出版社から書き下ろしで刊行した長編。多感な少年・芹川進が、中学の卒業を控えた日々を日記の形で書きとめていく青春小説。実在の少年の日記を素材に着想されたとされ、勉強や信仰、芸術への憧れ、家族とのふれあいのなかで、「本当の勉強」とは何かを問う少年の姿が、明るいユーモアと詩情をもって描かれる。
あらすじ
芹川進は、感受性の鋭い十六歳の少年。中学の卒業を控え、進学するか、かねて憧れる俳優の道に進むかで思い悩んでいる。進は、日々の出来事や、読んだ本、友人や教師とのやりとり、家族への思い、そして神への祈りを、率直な日記につづっていく。学校の勉強のむなしさに反発し、「本当の勉強」とは何かを問い、芸術への夢にこがれる進。やがて彼は劇団の研究生の試験に挑み、俳優としての一歩を踏み出す。厳しい稽古と貧しい暮らしのなかで、頼もしい兄や家族に支えられ、理想と現実のあいだで揺れながらも、進はひたむきに自分の道を歩んでいく。「思わせ振りを捨てたならば、人生は、意外にも平坦なところらしい」——十八歳を目前にした進は、讃美歌を口ずさみつつ、明るい決意を胸にきざむのだった。
登場人物
- 芹川進 俳優をこころざす多感な少年。日記の書き手
- 兄さん 進を導き、支える頼もしい兄
- 進の家族・友人・教師たち 進の日々の成長を見守る人々
冒頭部(原文より)
四月十六日。金曜日。すごい風だ。東京の春は、からっ風が強くて不愉快だ。埃が部屋の中にまで襲来し、机の上はざらざら、頬ぺたも埃だらけ、いやな気持だ。
「正義と微笑」太宰治(青空文庫)
末尾部(原文より)
思わせ振りを捨てたならば、人生は、意外にも平坦なところらしい。磐の上に、小さい家を築こう。お正月には、斎藤先生の所へ、まっさきに御年始に行こうと思っている。こんどは逢ってくれそうな気がする。僕は、来年、十八歳。
「正義と微笑」太宰治(青空文庫)
名文
微笑もて正義を為せ!
主人公の芹川進が日記の書き始めに掲げたモットー。少年らしい気負いと、それをすぐに自分で茶化してしまう含羞とが、この一句をめぐって生き生きと描かれる。
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。